49 沢火革

49 たくかかく


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

ミートボール屋のガイコツ
「おつかれ。」

カエル
「調子はどう?」

ミートボール屋のガイコツ
「最近忙しくてさ。」

茶番をトばす。

カエル
「知ってる。夜中までご苦労さん。」

ミートボール屋のガイコツ
「うるさかったろ?」

カエル
「全然。そういうBGMだと思って聞いてた。」

ミートボール屋のガイコツ
「おかげで金は貯まったけどな。」

カエル
「当然だろ。頑張ったんだから。」

ミートボール屋のガイコツ
「あのさ。」

カエル
「ん。」

ミートボール屋のガイコツ
「やっぱり街に調理場借りる事にした。」

カエル
「やっぱり?」

ミートボール屋のガイコツ
「キミさえ良ければここでも充分なんだけどさ、ジャマだろ?」

カエル
「全然ジャマじゃなかったよ。でもそうか、ついにこの日が来たか。」

ミートボール屋のガイコツ
「ああ。お別れだ。」

カエル
「傘の配達と集金は続けてくれるんだろうな。」

ミートボール屋のガイコツ
「もちろんさ。」

カエル
「元気でやれ。」

ミートボール屋のガイコツ
「キミと月一回しか会えなくなる日が来るとはね。」

カエル
「今までが会い過ぎてたんだよ。月一くらいでちょうど良いよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「そうだな。」

ミートボール屋のガイコツ
「寂しいとかないのかよ。」

カエル
「月一で会うからな。」

ミートボール屋のガイコツ
「強いな。」

カエル
「弱いさ。」

カエル
「…。」

ミートボール屋のガイコツ
「…。」

カエル
「なにこれ?」

ミートボール屋のガイコツ
「知らん。」

カエル
「でもまあここじゃ確かにちょっと町まで遠いし、設備もガラクタの寄せ集めの急ごしらえだったからな。」

ミートボール屋のガイコツ
「居心地だけは最高だったけどね。今となっては全てが愛おしい。」

カエル
「ミートボール様様だな。」

ミートボール屋のガイコツ
「キミのおかげだよ。」

カエル
「性に合ってるんだろ。大勢の人に囲まれてたほうがキミらしいと思うよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「確かに。」

カエル
「アパートも出るの?」

ミートボール屋のガイコツ
「来週引越しだ。」

カエル
「そうか。」

ミートボール屋のガイコツ
「儲かんなくなったらまた戻って来るよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「そん時はよろしく。」

カエル
「あんまりそういう事は考えないほうが良いよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「まあ、月一とは言ってみたけど傘以外の用事でもちょくちょく遊びには来るよ。そんな顔すんなよ。」

カエル
「どんな顔もしてねえんだが。なんでオレが寂しがってる感じで話が進んでいくんだよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「出て行く側としては送り出す側の涙が見たいもんだよ。」

カエル
「勝手なヤツだな。」

ミートボール屋のガイコツ
「キミほどじゃないさ。」

カエル
「わけわかんねえ。」

ミートボール屋のガイコツ
「まあ、キミから呼び出す事なんか無いだろうから勝手にバッタ持って来るわ。」

カエル
「わかってるじゃん。頑張れよ。」

ミートボール屋のガイコツ
「今までありがとうな。」

カエル
「またね。」




沢火革
たくかかく


季節が夏から秋に変わり、それに合わせて獣の毛が色鮮やかに生え替わる。変化を嫌い、古い慣習を捨てきれない外卦の兌と、変化し続ける内卦の離の対立。
古いものを革め、一新する。改革。革命。革新。

改革、革命の革なので、最初は天水訟、山風蠱、山地剝、沢天夬に続くとにかく上が気に入らねえシリーズだと思っていたがどうやら違う。
本質はもっと残酷でそれ以前と以後では価値観や仕組みが全く変わるという事。
井戸が水道になり、職人が機械に仕事を奪われ、ガラケーがスマホになり、今の時代を生きた子供が大人になるという事。
その変化さえも、不変の連続性の上に成り立っている事。
オレがもっと若ければ、この卦を前向きに捉えてたのかも。(実際前向きな卦)

「オートマタ」という映画。人間の発明した便利なツールとしてのAIではなく、人間の進化の延長線上にAIという存在があるんだって話。
淘汰される人間の主人公が、人間の文化であるダンスをロボットに教えるシーンを思い出す。


卦辞

革。
巳る日にして乃ち孚とせらる。
元いに亨る。貞に利ろし。
悔い亡ぶ。

かく。
おわるひにしてすなわちまこととせらる。
おおいにとおる。ていによろし。
くいほろぶ。

改革は、余りにも急変するので始めのうちは誰からも理解されないが、時が経てばその改革の正しさに皆が気付き、それを守っていく。古いものを改めた事に後悔も無くなる。

ある日突然一変する状況。受け入れ難く、耐え難く、それでも前に進むのは、みんな漠然と何かを変えたがって生きてるから。


爻辞

民意の矛先。革命の後先。


初爻

鞏むるに黄牛の革を用う。

かたむるにこうぎゅうのかわをもちう。

固い牛革でその身を固く縛る。

気持ちばかりが先走る。
時期尚早。準備も足りない。


二爻

巳る日にして乃ち之を革む。
征けば吉。咎无し。

おわるひにしてすなわちこれをあらたむ。
いけばきち。とがなし。

時期を見計らって改革を行う。
進めば吉。咎められない。

準備は万端。あとはタイミング。


三爻

征けば凶。貞なれども厲うし。
革言三たびにして就る。
孚有り。

いけばきょう。ていなれどもあやうし。
かくげんみたびにしてなる。
まことあり。

改革を強行するのは凶。正しくても危うし。
世の中の改革を望む声が三度聞こえたら、それこそが真の改革の合図。

下から突き上げるような革命。
一番虐げられている民衆の声を汲まない革命は、頭がすげ替わるだけで革命とは言わない。


四爻

悔い亡ぶ。
孚有りて命を改む。吉。

くいほろぶ。
まことありてめいをあらたむ。きち。

後悔は無い。誠の心で改革を行う。吉。

準備もタイミングも整う。
後は実行に移すのみ。


五爻

大人虎変す。
未だ占わずして孚有り。

たいじんこへんす。
いまだうらなわずしてまことあり。

虎の毛が美しく生え変わるように、偉大なる人物は古きを一新し改革を遂げる。占わずとも信頼していい。

念のため占ってみてはどうか。


上爻

君子豹変す。
小人面を革む。
征けば凶。貞に居れば吉。

くんしひょうへんす。
しょうじんめんをあらたむ。
いけばきょう。ていにおればきち。

人の上に立つ者は、豹の毛が鮮やかに生え変わるように改革に合わせて身も心も一新する。
凡人は表面だけを変え、人に従う。
これ以上の事は求めるのは凶。
成し遂げた改革の成果を守っていけば吉。

急に別人になったみたいに変わるという意味の「豹変」の元ネタ。
あまり良い意味の使われ方をしないのは多分豹のせい。


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