35 かちしん
かえるのうた
カエル
「いらっしゃい。」
便利屋のガイコツ
「おつかれ。」
カエル
「なんか良いニオイすんね。」
便利屋のガイコツ
「あー、最近アルバイトで焼き鳥焼いてんの。食う？」
カエル
「いらねえ。」
便利屋のガイコツ
「じゃあバッタ食え。バッタ。」
カエル
「ありがと。」
カエル
「便利屋はヒマなの？」
便利屋のガイコツ
「一応便利屋の延長線上でやってるつもりなんだけど。」
カエル
「エラいじゃん。」
便利屋のガイコツ
「当たり前だろ。食ってかなきゃならないんだから。ナリフリ構ってられるか。」
カエル
「てっきりスロットばっかしてると思ったよ。」
便利屋のガイコツ
「本当はそれが夢なんだけどな。」
カエル
「叶わぬ夢だな。」
便利屋のガイコツ
「うん。」
カエル
「でもそんなん時給安いだろ？」
便利屋のガイコツ
「まあね。でも売れ残った焼き鳥くれるし。時給貰って食費も浮くからさ、悪くないよ。良くしてもらってる。」
カエル
「そか。」
便利屋のガイコツ
「キミのカサも結構人持ってくよ。」
カエル
「へー。うれしいね。でも全然来てくれねえや。」
便利屋のガイコツ
「そんなもんじゃない？キミだって大挙として押し寄せて来られても困るだろ？」
カエル
「まあね。」
便利屋のガイコツ
「とにかく誰も来なくてもキミはカサを作れ。オレがバラまいてやる。今自分が出来る事。やりたい事をやれ。」
カエル
「そうする。」
便利屋のガイコツ
「さてオレはどうするかな。」
カエル
「というと？」
便利屋のガイコツ
「この街の便利屋は最近若い連中が仕切ってる。」
カエル
「うん。」
便利屋のガイコツ
「そして焼き鳥屋、というか移動販売業にパイプが出来た。」
カエル
「うん。」
便利屋のガイコツ
「そしてオレにはこのサンダー号がある。」
カエル
「やりたいの？移動販売？」
便利屋のガイコツ
「うん。」
カエル
「焼き鳥を焼くの？」
便利屋のガイコツ
「いや、それはなんか違う。」
カエル
「ハンバーガーとかは？キミ好きじゃん。」
便利屋のガイコツ
「うーん。」
カエル
「じゃあクレープとか、かわいいじゃん。」
便利屋のガイコツ
「店頭で焼くのはちょっと面倒くさい。」
カエル
「つまりトラックをガチのキッチンカーにはしたくないって事ね。」
便利屋のガイコツ
「そうそう。出来ればここで作って車で売りに行くようにしたい。運び屋の仕事はまだあるし。」
カエル
「ちょっと思いつかないな。」
便利屋のガイコツ
「ね。」
カエル
「ね。じゃねえよ。自分の事だろ。」
便利屋のガイコツ
「全然思いつかない。」
カエル
「じゃあしばらくは焼き鳥焼いてな。今自分が出来る事を一生懸命やれよ。」
便利屋のガイコツ
「そうする。」
便利屋のガイコツ
「帰るわ。」
カエル
「なんか考えときなよ。」
便利屋のガイコツ
「うん。」
カエル
「またね。」
火地晋
かちしん
地平線の向こうに姿を現した太陽。
日の出。
日の出とともに全てのモノが動き始め、太陽もまた天に向かって昇り進む。
聞いただけで吉運とわかる卦。めでたい。
ネットで見かけたアフリカのライオンとガゼルの話を思い出した。日が昇ったら走るべきだ。夜型の人は月が昇ったら吼えろ。
卦辞
晋。康侯用て馬を錫うこと蕃庶。
昼日三たび接す。
しん。こうこうもってうまをたまうことはんしょ。
ちゅうじつみたびせっす。
民を大事にする領主が、王様から馬をたくさん貰う。
更に一日の間に三度も王との謁見を許される。
立身出世とはこの事。
こんな素晴らしい人物だけが上に昇って行ける世の中だったらいいのに。
爻辞
進めるだけ進む。正しい道を。
正しい心で。
初爻
晋如。摧如。貞にして吉。
孚せらるるなきも、
裕にして咎无し。
しんじょ。さいじょ。ていにしてきち。
まことせらるるなきも、
ゆたかにしてとがなし。
障害があり、仲間に止められても進めると信じてたった独りで進む。
心が広いので仲間も責めたりしない。
きっと分かってもらえる。と信じて。
二爻
晋如。愁如。貞にして吉。
茲の介福を其の王母より受く。
しんじょ。しゅうじょ。ていにしてきち。
このかいふくをそのおうぼよりうく。
進めなくて困っている。
それでも正しい道を進もうとすれば幸福を王母から与えられる。
王母は聖母みたいな意味。
勝利の女神が微笑んだみたいなモンか。
三爻
衆允とす。悔い亡ぶ。
しゅうまこととす。くいほろぶ。
仲間を引き連れて進む。
後悔はない。
旅は道連れ。
四爻
晋如。鼫鼠。貞くすれば厲うし。
しんじょ。せきそ。かたくすればあやうし。
欲深い大ネズミ。
このまま進めば危うい。
正しさが無い。進む意味を考えなきゃ。
五爻
悔い亡ぶ。失得恤うる勿れ。
往きて吉。
利ろしからざる无し。
くいほろぶ。しっとくうれうるなかれ。
ゆきてきち。
よろしからざるなし。
後悔はしなくても良い。
損得勘定も必要無い。
進めば吉。良くないわけがない。
今が前進する時。迷わず行けよ。
上爻
其の角に晋む。維用て邑を伐つ。
厲うけれども吉にして咎无し。
貞くすれば吝。
そのつのにすすむ。これもってゆうをうつ。
あやうけれどもきちにしてとがなし。
かたくすればりん。
進み過ぎてこれ以上進めないところまで進んだ。
内乱を鎮圧する。危ういが吉。咎めは受けない。
しかしそれが正しくても恥ずべきことである。
進む事に固執し過ぎ。だから内側のほころびに気付かない。