沈む太陽。つまり夜。つまり闇。暗がりは暗がりのままにして、今はただ昇るはずの朝日をじっと待つ。
夜は怖いから。
卦辞
明夷。艱貞に利ろし。
めいい。かんていによろし。
正しい事が通らない時。
じっとして身を固く守っていた方が良い。
見て見ぬふりも時には。
それくらい自分の力ではどうしようもなく。
今は忍耐。ただひたすらに忍耐。
爻辞
初爻
明夷。于き飛び其の翼を垂る。
君子于き行きて、三日食わず。
往く攸有れば、主人言有り。
めいい。ゆきとびそのつばさをたる。
くんしゆきいきて、みっかくわず。
ゆくところあれば、しゅじんことあり。
暗い時代。低く低く飛ぶ鳥。
君子も三日間飲まず食わずで逃げるが、たどり着いた宿の主人に疑われ、文句を言われる。
難は逃れるが、思い通りにはなりづらい。
二爻
明夷。左股を夷る。用て拯う。
馬壮なれば吉。
めいい。さこをやぶる。もってすくう。
うまそうなればきち。
暗い時代。左ももを傷つけられる。
強く足の速い馬に乗れば逃げおおせる。吉。
被害が小さいうちに、誰かの助けを借りて退く事。
三爻
明夷。南に于て狩りし、其の大首を得。
疾く貞にすべからず。
めいい。みなみにおいてかりし、そのたいしゅをう。
とくていにすべからず。
暗い時代。正義の心を持って悪の首領を討ち取る。
但し今は悪の栄えてる時代。悪を裁くのも性急であってはならない。
仁義なき戦い。悪を打ち滅ぼそうと、自身が悪に染まらないように。
急いではいけない。時間を掛けて事を運ぶ。
四爻
左腹に入りて、明夷の心を獲。
于きて門庭を出づ。
さふくにいりて、めいいのこころをう。
ゆきてもんていをいづ。
王の腹心だがその王の悪意に気付いて逃げ出す。
裏側を見る。退いた方が良い。
五爻
箕子の明夷。貞に利ろし。
きしのめいい。ていによろし。
箕子のように暗い時代においても信念を失わない。
箕子(殷王朝の紂王の叔父)が狂人を装い難を逃れた逸話から。
隠し事。思っていることの逆。知らんぷりが得策。
上爻
明らかならずして晦し。
初め天に登り、後に地に入る。
あきらかならずしてくらし。
はじめてんにのぼり、のちにちにはいる。
心の無い王は、始めは勢いよく天に昇り、後に勢いを失い地に落ちる。
自業自得。始めは良いが、終わりには落ち込む。