55 雷火豊

55 らいかほう


かえるのうた

ミートボール王のガイコツ
「久しぶり。」

カエル
「久しぶり。」

ミートボール王のガイコツ
「バッタ食え。」

カエル
「ありがとう。」

カエル
「なんか飲む?」

ミートボール王のガイコツ
「コーラある?」

茶番をトばす。

カエル
「飲みかけだけども。」

ミートボール王のガイコツ
「ありがと。」

カエル
「大丈夫?」

ミートボール王のガイコツ
「なにが?」

カエル
「炭酸抜けてない?」

ミートボール王のガイコツ
「いいよ別に。コーラの味がすりゃ。」

カエル
「飲めりゃ良いか。」

ミートボール王のガイコツ
「飲めりゃ良いよ。」

ミートボール王のガイコツ
「今日はヒマなの?」

カエル
「まあね。」

ミートボール王のガイコツ
「何やってんの?」

カエル
「どうぶつの森。」

ミートボール王のガイコツ
「まだやってんのかよ?」

カエル
「いいだろ、好きなんだから。」

ミートボール王のガイコツ
「まあ、好きならしょうがないよな。」

カエル
「しょうがねえよ。」

ミートボール王のガイコツ
「なんか景気の良い話ある?」

カエル
「無いねえ。」

ミートボール王のガイコツ
「どこでもそんな感じか。」

カエル
「あ、そういえばこないだ来たお客さんがパンクロッカーでさ、」

ミートボール王のガイコツ
「なんでパンクロッカーが占いに来るんだよ。」

カエル
「オレがヒマそうに見えたんだろ。」

ミートボール王のガイコツ
「何を占ったんだよ。」

カエル
「小説家になりたいんだと。」

ミートボール王のガイコツ
「なんだそりゃ。メロディーに乗せきれない程世の中に不満があんのか?」

カエル
「知るか。」

ミートボール王のガイコツ
「まあ、はみ出しもんが血い流しながらナイフ振り回してるって意味じゃパンクスも小説家も似たようなもんか。」

カエル
「? まあ、そうだな。」

ミートボール王のガイコツ
「?」

カエル
「でも、売れると良いよな。」

ミートボール王のガイコツ
「売れると良いねえ。」

ミートボール王のガイコツ
「なんか若い頃なりたいモンとかあった?」

カエル
「特に無いかな。」

ミートボール王のガイコツ
「なんかあったろ?」

カエル
「無えなあ。でも、何者にもなりたくないってのはあったかもな。」

ミートボール王のガイコツ
「若い頃はみんなそんなもんだよ。」

カエル
「なんかあった?なりたかったモン。」

ミートボール王のガイコツ
「オレは旅人かな。」

カエル
「なんで?」

ミートボール王のガイコツ
「かっこいいじゃん。」

カエル
「そうか?」

ミートボール王のガイコツ
「つまんねえしがらみや、めんどくせぇ足の引っ張り合いから抜け出して、たった独りアテも無く放浪すんのさ。」

カエル
「いつまで?」

ミートボール王のガイコツ
「野垂れ死ぬまで。」

カエル
「人間関係に疲れてるのか?」

ミートボール王のガイコツ
「昔の話だよ。今は旅になんか出なくたって自由さ。求めてるモンさえ変わらなきゃ、どこでだって、いつだって。」

カエル
「自由か。」

ミートボール王のガイコツ
「至れなかった若気の至りとも。」

カエル
「? パンクロッカーか、小説家にでもなれよ。」

ミートボール王のガイコツ
「今度生まれ変わったらな。」

カエル
「じゃあ、早く死ねよ。」

ミートボール王のガイコツ
「もう死んでんだよ。」

ミートボール王のガイコツ
「でもまあソイツ、売れると良いよな。」

カエル
「売れると良いねえ。」

ミートボール王のガイコツ
「また来るわ。」

カエル
「またね。」




雷火豊
らいかほう


雷鳴と稲光。震の行動力と離の明智を併せ持つ全能感。

中天の太陽。放物線の頂上からの息を呑む景観。

豊富。豊穣。充満。盛大。

過程をすっ飛ばしてその極限状態だけを切り取って額に入れて飾りましたみたいな卦。

六十四卦中随一の火力とスピードと字面の格好良さと声に出した時の気持ち良さを誇る正に大砲。雷火砲。

全てが備わった完全無欠の状態。と言うよりはそこに行き着くまでの状況とタイミングそのものの価値と言ったところか。

あるいは後に何も残らなくても構わない程の圧倒的な初期衝動の塊かも。

実際この記事も下書きの段階ではもっとセンシティブな内容と言うか自分の下半身の事を聞かれてもないのに延々と書き殴るというあの状況とタイミングじゃなかったら産み出せない禁忌みたいな代物だったのだ。
バカがバレる(バレてる)と思って断腸の思いでお蔵入りにしたけれど。

しかし、あの下書きこそが、あの下書きを書いている時の自分こそが本当の意味での「雷火豊」だったんじゃないかと今になって思うようになって来た。
いいじゃないか、バカみてえな文章だって。そこに熱が残ればさ。

音と光はあっという間に通り過ぎ、真昼の太陽もいずれは傾く。落雷のような閃きは儚く消え、かつての恋人のような下書きも薄れて忘れて、ぬけがらのようなオレが、また出涸らしのような文章を書いてる。

ちなみに「モンスターハンター」と言うゲームの中に「雷火豊」の名を冠する武器が登場する。

三陰三陽の卦。


卦辞

豊。
亨る。王之に假る。
憂うる勿れ。
日中に宜し。

ほう。
とおる。おうこれにいたる。
うれうるなかれ。
にっちゅうによろし。

順調に進む。王はその地位を確立する。
心配は要らない。
行動するなら明るいうちに。

思い立ったが吉日とか、旬は逃すなとか、高確率状態とかになるか。要は占ってる場合じゃねえって事か。王が王であるうちに、リンゴがリンゴであるうちに、オレがオレであるうちに。


爻辞

憂うるなかれとはいえ、今が一番良いですよと言われれば後先考えちゃうか。

卦辞は文王が、爻辞はその子供の周公が書いたと言われてるが、なんと言うか、似てない。この卦に限った事じゃないけど。


初爻

其の配主に遇う。
旬と雖咎无し。
往きて尚ばるること有り。

そのはいしゅにあう。
ひとしといえどもとがなし。
ゆきてたっとばるることあり。

協力するべき相手に偶然会う。
相性は悪いが実力者同士が手を組むので咎められない。
進んで行けば尊ばれる。

離feat.震。明智と行動力。強いことだけは確か。


二爻

其の蔀を豊いにす。
日中斗を見る。
往きて疑疾を得。
孚有りて発若たれば吉。

そのほうをおおいにす。
にっちゅうとをみる。
ゆきてぎしつをう。
まことありてはつじゃくたればきち。

草むらに覆われて昼間なのに北斗七星が見える程暗い。
そのまま進んでも疑われる。
誠意を持って草むらを切り開いて行けば吉。

その草陰は力を失った王「五爻」の心の闇。少しづつ心の闇を払ってあげる。


三爻

其の沛を豊いにす。
日中沫を見る。
其の右肱を折る。
咎无し。

そのはいをおおいにす。
にっちゅうまいをみる。
そのゆうほうをおる。
とがなし。

草が幕のように辺りを覆い、昼間なのに小さな星が見える。
右肘を折る。
咎められない。

つまらない王が治める暗い世の中。右肘を折ってしまい、何の役にも立てないが、悪政に肩入れする事もない。


四爻

其の蔀を豊いにす。
日中斗を見る。
其の夷主に遇う。吉。

そのほうをおおいにす。
にっちゅうとをみる。
そのいしゅにあう。きち。

草むらに覆われて昼間なのに北斗七星が見える程暗い。
その暗さは自身の心の暗さ。
改心して自ら協力者に会いに行けば吉。

実力はあるが、それを発揮出来ずにいる日陰者が、ついにその理解者(初爻)と出会う。


五爻

章を来たす。
慶誉有り。吉。

しょうをきたす。
けいよあり。きち。

力の弱い王が賢者を招き入れる。
慶びも誉れも得る。吉。

この賢者は二爻で王の心の闇を払った方。その人徳は腐っても王と言ったところ。危なかったけど。


上爻

其の屋を豊いにし、
其の家を蔀う。
其の戸を闚えば、
闃として其れ人无し。
三歳覿ず。凶。

そのおくをおおいにし、
そのいえをおおう。
そのとをうかがえば、
げきとしてそれひとなし。
さんさいみず。きょう。

かつて豊かだった大きな家。
今は草木が生い茂り、陽の光も当たらない。
入り口から中を覗いても誰も見当たらない。
三年経っても誰も出て来ない。凶。

落ちぶれた権力者。デカいだけの家に人知れず引きこもる。


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