44 天風姤

44 てんぷうこう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「おつかれ。なんか飲んでいい?」

カエル
「コーラがあるよ。」

便利屋のガイコツ
「もらうわ。」

便利屋のガイコツ
「誰かいたの?」

カエル
「ああ、変わったお客さんでさ。」

茶番をトばす。

便利屋のガイコツ
「どんな?」

カエル
「雨合羽の修理してくれって言われたんだけどさ、」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「着たままで直してくれって。」

便利屋のガイコツ
「で、着たまま直したのか?」

カエル
「脱がないんだもん。」

便利屋のガイコツ
「服来てなかったんじゃない?」

カエル
「いいだろ服くらい着てなくても。」

便利屋のガイコツ
「いい訳ねえだろ。オレらが言うのもなんだけど。」

カエル
「じゃあ通報した方が良かったか?」

便利屋のガイコツ
「まあ、確かに妙な客だわな。」

便利屋のガイコツ
「他には?」

カエル
「何が?」

便利屋のガイコツ
「だから、なんか喋ったりした?」

カエル
「この辺じゃ見ない顔だな?って聞いたよ。」

便利屋のガイコツ
「絶対そんなカッコ良く聞いてないよね?」

カエル
「いいじゃん別に。」

便利屋のガイコツ
「で?」

カエル
「最近来たんだって。辛気臭い町だねって言うから、雨のせいさ。って答えたよ。」

便利屋のガイコツ「絶対そんなカッコ良く答えてないよね?」

カエル
「いいじゃん別に。」

便利屋のガイコツ
「そのお客さんどっから来たの?」

カエル
「聞いてない。」

便利屋のガイコツ
「そっか。どんな顔だったの?」

カエル
「それも分かんない。入ってくる時以外ずっと後ろ向きだったから。」

便利屋のガイコツ
「男か女かも?」

カエル
「分かんない。」

便利屋のガイコツ
「なんで分かんないんだよ。声とか手元とかでわかるでしょうよ。」

カエル
「ボソボソ喋るんだもん。」

便利屋のガイコツ
「ボーッとしてるからだよ。」

カエル
「仕事してたんだよ。」

便利屋のガイコツ
「分かった。服着てない女だ。服着てない女がいい。」

カエル
「だったらいいな。でモノ言ってんじゃねえよ。」

便利屋のガイコツ
「占ってみなよ。」

カエル
「いいよ。」

カエル
「出た。天風姤。
姤は女壮なり。
女を取るに用うる勿れ。
変爻は初爻と五爻。姤は大有に往く。」

便利屋のガイコツ
「ほら、女だ。」

カエル
「ぬう…。」

便利屋のガイコツ
「そういう事にしときなよ。」

カエル
「まあどっちでも良いしな。お客さんはお客さんだ。」

便利屋のガイコツ
「この街にいるんならどっかでまた会えるか。」

カエル
「会っても言われなきゃ分かんないけどね。」

便利屋のガイコツ
「あれ?」

カエル
「?」

便利屋のガイコツ
「なんか落ちてる。」

カエル
「なんだ?」

便利屋のガイコツ
「指輪だ。」

カエル
「あの客のか?」

便利屋のガイコツ
「また指輪だ…。」

カエル
「キミ良く指輪拾うね。」

便利屋のガイコツ
「返さなきゃな。」

カエル
「ここに置いとけば?気付けば取りに来るさ。」

便利屋のガイコツ
「それもそうか。」

便利屋のガイコツ
「じゃあ、そろそろ行くわ。」

カエル
「またね。」


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天風姤
てんぷうこう


一陰五陽にして十二消長卦の一つ。五陽の下にひっそりと顔を出す一陰。古き王を決し去り(沢天夬)、新しい王の元、新しい国を治めたのもつかの間、水面下ではまた新たな争いの火種が誰に知られる事無く静かに燃える。

姤は遭遇する。突然バッタリ出会うという意味。と言うよりは予兆はもっと前にあって、その不穏な気配が表面化してからやっと気付いてびっくりするイメージか。


卦辞

姤。女壮なり。
女を取るに用うる勿れ。

こう。じょそうなり。
じょをとるにもちうるなかれ。

その女は強すぎる。
娶ってはいけない。

五人の男の下に静かに表れた一人の女が、後に五人諸共手中に収めて手が付けられなくなる暗示。不吉の前触れ。かつて古代中国の殷という国の王様が、妲己と言う美女に惑わされて民を苦しめた逸話があるらしいけど、それを差っ引いてもなんか女性に失礼。

強いて言うならルパン三世に登場する峰不二子か。確かに絶対に嫁にだけはしたくないか。あっちから願い下げだろうけど。どれだけ騙されても、出し抜かれても「裏切りは女のアクセサリーみたいなもん」と言ってのけるルパンを見習いたい今日この頃。


爻辞

豚とか魚とか、爻辞は爻辞で失礼。女性を卑しく描く事で、女性に振り回される男性の甲斐性の無さを表現してるのかも。モテない男のラブコメディ。昭和歌謡。出会ってしまった二人。なんてロマンチック。


初爻

金柅に繋ぐ。貞吉。
往く攸有れば凶を見る。
羸豕孚するも蹢躅す。

きんじにつなぐ。ていきつ。
ゆくところあればきょうをみる。
るいしまことするもてきちょくす。

豚を弱いうちに繋ぎとめておく。そのままにしておくのは凶。今は弱い豚もいずれは力をつけて暴れだす。

金柅(きんじ)とは金属製の糸車の事。なぜそれに弱い豚を繋ぐのかちょっと想像出来ない。古代中国の慣習だろうか。不安要素はしっかり管理。


二爻

包に魚有り。咎无し。
賓に利ろしからず。

つつみにうおあり。とがなし。
ひんによろしからず。

魚を包んで隠す。咎められない。それを客に出すのは良くない。

誰にも見つからないように。初めから無かったかのように。


三爻

臀に膚无し。
其の行くこと次且たり。
厲ういけれども大いなる咎无し。

いさらいにはだえなし。
そのいくことじしょたり。
あやういけれどもおおいなるとがなし。

お尻の肉が無い(例えばの話)ので落ち着かない。会いに行きたいけれど会いに行けない。危ういが、会わない方が良い相手に結局会わずに済むので咎められない。

すでに術中。


四爻

包に魚无し。凶を起こす。

つつみにうおなし。きょうをおこす。

魚は包み隠されていてそこには無い。力ずくで奪おうとするのは凶。

諦めてしまった方がいい時もある。


五爻

杞を以て瓜を包む。
章を含む。
天より隕つる有り。

きをもってうりをつつむ。
しょうをふくむ。
てんよりおつるあり。

高い柳は道徳の象徴。蔓を伸ばして這い上がって来る瓜すら包み込む。時が経てば瓜は熟成し、自然と地へ落ちる。

騙された振り。誘惑された振り。ダンディー。


上爻

其の角に姤う。
吝。咎无し。

そのつのにあう。
りん。とがなし。

誰彼構わず突き放す。誰とも親しくなれない恥ずべき行いだが、悪人も近寄らないので咎められない。

喧嘩腰。不器用。ハードボイルド。男って結局それが一番ラクなのよね。ヤダわよね。


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