42 風雷益

42 ふうらいえき


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「何やってんの?」

カエル
「カサ治してる。」

茶番をトばす。

便利屋のガイコツ
「バッタ買って来たよ。」

カエル
「ありがと。今手が離せないから後で貰うよ。」

便利屋のガイコツ
「ここに置いとくよ。なんか飲んでいい?」

カエル
「野菜ジュースしかねえ。」

便利屋のガイコツ
「貰うわ。」

便利屋のガイコツ
「忙しそうだな。」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「手伝おうか?」

カエル
「ありがと。」

便利屋のガイコツ
「ここをバラせばいいの?」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「これは?」

カエル
「それはそのままでいい。」

便利屋のガイコツ
「骨が折れてる。」

カエル
「そういうのはハネといて。」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「…。」

便利屋のガイコツ
「いっぱいあるね。」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「どうしたのコレ?」

カエル
「あの便利屋の兄ちゃんだよ。」

便利屋のガイコツ
「あいつが持って来たの?」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「キミに治させてアイツが売るのか?」

カエル
「いや、くれたんだよ。お礼だって。なんかの足しにしてくれって。」

便利屋のガイコツ
「お礼?キミなんかしたの?」

カエル
「心当たりないな。」

便利屋のガイコツ
「ふーん。忘れてるだけじゃないの?」

カエル
「オレが?」

便利屋のガイコツ
「キミが。」

カエル
「そういや前、占いに来たことあったな。オレも便利屋やろうかなーって言ってた時だ。」

便利屋のガイコツ
「その占いが当たったんじゃない?」

カエル
「それなら本人がそう言うだろ。」

便利屋のガイコツ
「察しろってことさ。照れくさいんだよ。」

カエル
「ふーん。キミにもよろしくってさ。あと悪かったなって。」

便利屋のガイコツ
「悪かった?」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「ああ、仕事取っちゃってって事か。」

カエル
「どうだろうね。」

便利屋のガイコツ
「まあいいや。儲かってそうだった?アイツ?」

カエル
「なんかもっと手広くやりたいからこの町離れてデカいトコ行くんだと。」

便利屋のガイコツ
「そんなに儲かってんのかよ。」

カエル
「そんなことなら仕事回し合って仲良くしとけば良かったって?」

便利屋のガイコツ
「いや、いいよ。どうせオレじゃ付いてくの無理だし。」

カエル
「確かに間違いなくそうだけどそう卑屈になるなよ。」

便利屋のガイコツ
「いや、そうじゃなくて、やっぱり王様に向いてるのはアイツだよ。オレじゃない。」

カエル
「キミが王様に向いてるわけないじゃん。なんであの兄ちゃんとキミがどっちが王様かの話になるんだよ。」

便利屋のガイコツ
「まあな。」

カエル
「まあな。じゃねえよ。」

便利屋のガイコツ
「で、この町の便利屋はどうすんの?」

カエル
「いや、だからこの町の仕事は部下とか他の同業者に任せてって事じゃないの?」

便利屋のガイコツ
「ふーん。足元すくわれなきゃいいけど。」

カエル
「心配なら会ってくりゃいいじゃん。」

便利屋のガイコツ
「別に良いよ。ガキの転校じゃあるまいし。」

カエル
「でも元々はあの兄ちゃんが便利屋を騙っていかがわしい仕事をキミにやらせたから、今の便利屋のキミがいるわけだろ?」

便利屋のガイコツ
「まあ、そうなってしまったな。」

カエル
「お礼くらい言って見送ってもバチ当たらないんじゃないか?」

便利屋のガイコツ
「まあな。」

カエル
「会って来た方がいいよ。」

便利屋のガイコツ
「ちょっと行ってくる。」

カエル
「またね。」



風雷益
ふうらいえき


盛んに動き進む雷と、従い形を成す風。
真逆の性質の様でいて、共に実体はなく、科学のおかげで正体が分かっている現代でもなかなか制御が利かない。人が昔からなんとなく困って、なんとなく利用してきた存在。

上に立つ存在も、下で支える存在があればこそ。
何の不安も無く眠る赤ちゃんも、親の庇護があればこそ。
JRAの運営が成り立つのも、考え無しに馬券を購入するライトユーザーの存在があればこそ。
そう。ムダな事などこの世界には何一つ無いのだ。
世の中を愛せ。骨の髄まで。だからたまには還元してくれ。

一つ前の山沢損と同じく三陰三陽の卦で、天地否の四爻を減らして初爻に足すとこの形に。
民の苦労や努力によって豊かになった王が、今度は民に自分の財の一部を還元する様子。大盤振る舞い。


卦辞

益。往く攸有るに利ろし。
大川を渉るに利ろし。

えき。ゆくところあるによろし。
たいせんをわたるによろし。

進んで事を行ってもよい。
大川を渡るような大きな事を行ってよい。

震の行動力と統率力、巽の対応力と追従性を兼ね備えた船があれば、大きな川を渡るような大事業も達成できると言う意味らしい。
Zガンダムで言うとパプテマス・シロッコとジ・Oみたいなものか。

※パプテマス・シロッコとジ・O・・・・「機動戦士Zガンダム」に登場する木星帰りの天才「パプテマス・シロッコ」が自身の為に開発したワンオフ機が「ジ・O」。
パイロットの入力した操作を忠実に再現する精密な機体制御と、爆速の追従性が最大の特徴。
簡単に言うと天才シロッコ本人が乗りさえすれば「当てれる」し、「避けれる」。

強力な兵装も変形合体も必要とせず、本来のモビルスーツの設計思想を極限まで掘り下げた傑作。
ロボットではなく、正にモビル「スーツ」。
もちろんこの記事は風雷益の為に書いてる。


爻辞

利益とは、幸せとは、人の世とは。


初爻

用て大作を為すに利ろし。
元吉。咎无し。

もってたいさくをなすによろし。
げんきつ。とがなし。

上からの援助で大きな物を産み出す。大吉。咎められることも無い。

ホワイトな職場環境が当たり前の世の中。


二爻

或いは之を益す。
十朋の亀も違う克わず。
永貞にして吉。

王用て帝に亨す。吉。

あるいはこれをえきす。
じゅっぽうのきもたがうあたわず。
えいていにしてきち。
おうもってみかどにきょうす。きち。

利益を得る。
例えば貴重な亀の甲羅で占っても間違いなく。
正しさを末永く存続させる事が吉。
王は帝を祀り、それを受け帝も吉を与える。

真面目な人間がバカを見ない世の中。


三爻

之を益するに凶事を用う。咎无し。
孚有りて中行。
公に告げて圭を用う。

これをえきするにきょうじをもちう。とがなし。
まことありてちゅうこう。
こうにつげてけいをもちう。

利益を得る為に凶事と苦難を受ける。咎められる事は無い。
嘘偽りは無く、偏りも無い。
そのことを公に告げれば、誠意が伝わる。

頑張ったら頑張った分だけ評価される世の中。


四爻

中行公に告げて従わる。
依りて国を遷すことを為すに用うるに利ろし。

ちゅうこうこうにつげてしたがわる。
よりてくにをうつすことをなすにもちうるによろし。

民を思う誠意が王を動かす。
国を移す大仕事も任される。

こんな中間管理職の人が出世する世の中。


五爻

孚有り恵心。
問うこと勿れ元いに吉。
孚有りて我が徳を恵む。

まことありけいしん。
とうことなかれおおいにきち。
まことありてわがとくをめぐむ。

王は誠心誠意国を支える民を潤す。
占うまでもなく大吉。
民もこの恩恵を受けて更に王に従う。

こんな王様が統治する世の中。


上爻

之を益する莫
或いは之を撃つ。
心を立つること恒无し。凶。

これをえきするなし。
あるいはこれをうつ。
こころをたつることつねなし。きょう。

自分を損ねて他を益する事をしない。自分の利益だけを求めて敵を作る。
考えるのは損得の事だけ。
ずっとそれの繰り返し。凶。

ホントにそんな素晴らしい世の中あったの?


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