41 山沢損

41 さんたくそん


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「いやー疲れた。」

カエル
「どうだったの?」

便利屋のガイコツ
「いや、負けた。」

茶番をトばす。

カエル
「なんでパチ屋に行ってんだよ。」

便利屋のガイコツ
「今日ちょっと調子悪いな。頭痛もする。」

カエル
「今日は移動販売の手続きしに行ったんじゃなかったのか?」

便利屋のガイコツ
「許可は取ったよ。」

カエル
「そうか。そのあと負けたの?」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「幸先悪くなるからそういうのやめな。」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「なんかキレてない?」

便利屋のガイコツ
「最初は勝ってたんだよ。」

カエル
「またありきたりな言い訳を。」

便利屋のガイコツ
「止めようと思ったら店員がアメ玉をくれてさ。」

カエル
「子供みてえだ。」

便利屋のガイコツ
「そのタイミングで急に演出が騒がしくなって来て。」

カエル
「はいはい。」

便利屋のガイコツ
「まあ勝ってるから下皿のコインだけ使うかって思ってさ。」

カエル
「お手本のような展開だな。」

便利屋のガイコツ
「気がついたらドル箱のコインと財布の金が無くなってた。全部。」

カエル
「ダサ過ぎんだろ。」

便利屋のガイコツ
「あのアメ玉なんか変なクスリ入ってるんじゃないのか?催眠効果のある。」

カエル
「入ってるワケねえだろ。」

便利屋のガイコツ
「なんか変な味したし。なんか催眠の味がした。」

カエル
「自分の意思とは無関係に金をコインサンドに突っ込んでるとな、口の中が酸っぱくなるんだよ。」

カエル
「それが敗北の味だ。」

便利屋のガイコツ
「うるせえ。」

カエル
「まあ、よくある事じゃない。」

便利屋のガイコツ
「キミのバッタだって買えたかもしれないんだぜ。一緒に悔しがってくれないのかよ。」

カエル「せめてオレのバッタを買ってからパチ屋行って欲しかったとしか思わん。」

便利屋のガイコツ
「一気にやる気が無くなったわ。やる気と金がよ。」

カエル
「自分が悪いんだろ。」

便利屋のガイコツ
「いや、あんな負かせ方したらお客さんトぶと思う。絶対。長くないな、あの店も。」

カエル
「コイツ…。」

カエル
「まあいいんじゃない?キミが突っ込んだ金もそのパチ屋の儲けになってさ、」

便利屋のガイコツ
「やめなさい。」

カエル
「そのパチ屋で働いてる従業員達の給料になってさ、」

便利屋のガイコツ
「やめなさい。」

カエル
「その人達が貰った給料をキミの代わりに有意義に使ってくれると思えば、幸せだと思わない?」

便利屋のガイコツ
「オレの金、オレの夢。」

カエル
「儚い夢だったな。楽しかっただろ?出してる間はよ。」

便利屋のガイコツ
「もうやめた。もう行かない。」

カエル
「それも聞いた事ある。」

便利屋のガイコツ
「なんか冷たくないか?」

カエル
「別に。負けたからじゃないか?はいコレ。」

便利屋のガイコツ
「なにコレ?」

カエル
「プレゼント。」

便利屋のガイコツ
「くれんの?オレに?」

カエル
「キミがオレのカサをばらまいてくれたおかげで最近忙しくてね。ちょっとはキミに還元しないとなって。」

便利屋のガイコツ
「オ、オマエ…。」

カエル
「いや、そんなにいっぱいじゃないよ?」

便利屋のガイコツ
「捨てる神あれば拾う神ありか。」

カエル
「大げさなんだよ。照れんね。」

便利屋のガイコツ
「この金があれば…。」

カエル
「待て、やっぱり返せ。」

便利屋のガイコツ
「冗談だよ。ありがとう。」

カエル
「行くなよ。」

便利屋のガイコツ
「用事思い出したから帰るわ。」

カエル
「行くなよ。」

便利屋のガイコツ
「行くかよ。これは大事な金だ。」

カエル
「大事じゃない金なんかないだろ。」

便利屋のガイコツ
「そうだな。また来るわ。」

カエル
「またね。」



山沢損
さんたくそん


高くそびえる山ほど、その沢は深い。自分が損した分だけ、誰かがちゃんと得するように出来てる。逆もまた然り。
自然の摂理と人間社会のシーソーゲーム。相対性。

三陰三陽の卦で、地天泰の爻を下に一つづつスライドして、はみ出た初爻を上爻に持っていくとこの形になる。

これは泰平の世を築いた王への感謝を込めて、民が自分の利益を損ねて王へ献上するという意味合い。


卦辞

損。孚有り。元吉。咎无し。貞にすべし。
往く攸有るに利ろし。曷をか之を用いん

二簋用て亨すべし。


そん。まことあり。げんきつ。とがなし。ていにすべし。
ゆくところあるによろし。なにをかこれをもちいん。
にきもってきょうすべし。


損を惜しまないという事は本当の意味で有益と言う事。
咎められる事も無く、大吉。
積極的に進んでもいい。神前に供えるものも、心が誠で満たされているのなら二つほどの質素なものでいい。


先行投資や大事な人へのプレゼントは自分の気持ちに比例した「損」ほど強い意味を持つ。
働いて稼いだ金で人に奢るのと、あぶく銭で奢るのとでは同じ奢りでも内実は異なる。
損は損じゃない。損は真っすぐ歩いてきた生き様。足跡じゃなければならない。

パチンコにハマっていた頃の自分に、お前の暴風雨みたいな散財は決して無駄ではなかったと、顔面をぶん殴りながら言いたい。(これは損沢山)


爻辞

恩に着る事などないさ。
はした金だ。←人生で一回は言いたい。


初爻

事を巳めて遄かに往く。咎无し。
酌りて之を損す。

ことをやめてすみやかにゆく。とがなし。
はかりてこれをそんす。

自分の事を速やかに止めて人の為に動く。咎められない。
損すると決めたのなら計画的に。

助けられなくなる前に。


二爻

貞に利ろし。征けば凶。
損せずして之を益す。

ていによろし。いけばきょう。
そんせずしてこれをえきす。

自分を固く守る。進めば凶。
損をしない範囲で人を得させる。

遠くから、援護射撃。


三爻

三人行けば則ち一人を損し、
一人行けば則ち其の友を得。

さんにんいけばすなわちひとりをそんし、
ひとりいけばすなわちそのともをう。

三人で進むと一人損をする。
一人で進めば友を得られる。

バディシステム。人は三人以上集まると派閥が出来る。


四爻

其の疾いを損する。
遄かならしむれば喜び有り。
咎无し。

そのやまいをそんする。
すみやかならしむればよろこびあり。
とがなし。

病を損する。
つまり病が人の助けで治る。
早ければ早いほど喜ばしい。
咎められない。

誰かが助けてくれる。
多分いつか助けてやった鶴だろう。


五爻

或いは之を益す。
十朋の亀も違う克わず。
元吉。

あるいはこれをえきす。
じゅっぽうのきもたがうあたわず。
げんきつ。

自分に利益が舞い込む。
貴重な亀の甲羅で占っても間違いなく。
大吉。

見返りを求めない誠の損を人からしてもらえる時。感謝。


上爻

損せずして之を益す。
咎无し。貞吉。
往く攸有るに利ろし。

臣を得て家无し。

そんせずしてこれをえきす。
とがなし。ていきつ。
ゆくところあるによろし。
しんをえていえなし。

自分は損をせず、利益を上げる。
咎められない。それを固く守れば吉。
私利私欲の為ではなく、周りの為に使ってこその益。

損の極。増やして減らして増やして減らして。そのサイクルの外側。


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