40 雷水解

40 らいすいかい


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「ごきげんよう。カエルさん。」

カエル
「おつかれ。」

茶番をトばす。

便利屋のガイコツ
「今日は暖かいですね。街も人も喜んでいます。」

カエル
「家の中にいるから全然分からん。」

便利屋のガイコツ
「そうですか。それは結構。」

カエル「立ってないで座んなよ。なんか飲む?」

便利屋のガイコツ
「ではコーラを。」

カエル
「ちょっと待っててね。」

便利屋のガイコツ
「メルシー。」

カエル
「ああ、ついにアタマおかしくなっちまったか。」

便利屋のガイコツ
「誰のアタマの話です?」

カエル
「いいよ、なんでもないよ。」

便利屋のガイコツ
「ふう。とても美味しいコーラ。まるで心まで炭酸の泡に包まれるようだ。」

カエル
「そうでしょう?未開封のままで冷蔵庫に一日寝かせていたものなので。」

便利屋のガイコツ
「未開封で?」

カエル
「未開封で。」

便利屋のガイコツ
「本当に?」

カエル
「本当に。」

便利屋のガイコツ
「素晴らしい。」

カエル
「ありがとうございます。お出し出来るお客様をずっと待ち侘びておりましたので。」

便利屋のガイコツ
「光栄ですね。」

カエル
「うふふ・・・」

便利屋のガイコツ
「ははは・・・」

カエル
「機嫌良さそうじゃん。」

便利屋のガイコツ
「まあね。」

カエル
「なんかあったの?」

便利屋のガイコツ
「ミートボールだ。」

カエル
「は?」

便利屋のガイコツ
「ミートボールを売る事にしたよ。」

カエル
「なんで?」

便利屋のガイコツ
「やっぱり現地で調理するよりも、ここで仕込んで売りにだけ行った方がわざわざクルマをキッチン仕様にしなくてもいいんじゃないかなって。」

カエル
「確かに。保温するための設備だけでいいのか。でもそれは別にミートボールじゃなくてもいいじゃん。」

便利屋のガイコツ
「いやこないださ、」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「山の向こうの屋敷に行ったんだけどさ。」

カエル
「やっぱり行ったんだ?」

便利屋のガイコツ
「仕事でね。」

カエル
「で?」

便利屋のガイコツ
「作ってくれたのよ。娘さんがさ。」

カエル
「ミートボールを?」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「ふーん。美味かった?」

便利屋のガイコツ
「いや、味は普通だったんだけどさ。なんかピンと来てさ。」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「あらかじめ作って置いたミートボールを紙コップに入れてさ、」

カエル
「何個?」

便利屋のガイコツ
「何個でも良いよ。そこにあらかじめ作って置いたソースをかけてさ、お客さんにお渡しすると。」

カエル
「いくらで?」

便利屋のガイコツ
「まだ決めてない。」

カエル
「ふーん。」

便利屋のガイコツ
「で、とっとと売りさばいて、とっとと帰って来ると。」

カエル
「そんなに上手く行く?」

便利屋のガイコツ
「ダメかな?」

カエル
「思ったよりはちゃんとしてたけどさ。」

便利屋のガイコツ
「でしょ?」

カエル
「でもここで作るって、厨房の設備なんてないよ。オレの台所使うつもりか?」

便利屋のガイコツ
「いや、それはもう手に入った。」

カエル
「そうか。どこで?」

便利屋のガイコツ
「だから山の向こうのおカミさんから。古いヤツ使ってないから持ってってくれって。」

カエル
「なんでも貰って来るな。」

便利屋のガイコツ
「くれるんだもん。」

カエル
「でもコンロなんか貰って来てもガス引っ張ってないよ。この倉庫。」

便利屋のガイコツ
「プロパン用だから構わないよ。どうせ売りに行く時はトラックに積まなきゃならないし。」

カエル
「それもそうか。」

便利屋のガイコツ
「電気と水は使わせてくれ。金は払うからさ。」

カエル
「当たり前だ。」

便利屋のガイコツ
「傘もついでに置いてあげるし。」

カエル
「助かるよ。」

便利屋のガイコツ
「ちょっと占って見ようかな。」

カエル
「どうせ悪い結果でもやるんでしょ?」

便利屋のガイコツ
「一応さ。儀式みたいなもんさ。」

カエル
「儀式ね。」

便利屋のガイコツ
「出た。」

カエル
「雷水解か。」

便利屋のガイコツ
「悩みが解けるヤツか。」

カエル
「キミはやっぱり人の集まるトコロに行った方が良いみたいだ。」

便利屋のガイコツ
「そうか?」

カエル
「解決、解放、止まっていた事が動き出す。」

カエル
「変爻は初爻と四爻。解は兌に往く。喜び、楽しむだ。」

便利屋のガイコツ
「いいじゃん。」

カエル
「欲張るな、楽しようとするなってさ。」

便利屋のガイコツ
「楽はするよ。」

カエル
「もう年寄りだしな。」

便利屋のガイコツ
「通り越して死んでんだよ。」

便利屋のガイコツ
「帰るわ。また面倒かけるよ。」

カエル
「またね。」



雷水解
らいすいかい


内卦の坎(冬)の険しさを外卦の震(春)の暖かさで解くというほんわかな意味。
縛られていた現状や、頓挫していた計画が動き出す。

解れる、緩むという意味もあるので、気のゆるみや油断の意味も。


卦辞

解。西南に利ろし。
往く攸无ければ、其れ来り復りて吉。
往く攸有れば、夙くして吉。

かい。せいなんによろし。
ゆくところなければ、それきたりかえりてきち。
ゆくところあれば、はやくしてきち。

暖かくて人が集まる西南に向かう。
片付ける問題が無ければいつも通りにしていれば吉。
取り急ぎ片付ける問題があるなら早急なほど吉。

水山蹇のアンサーソングみたいな卦辞。
もちろんこの二つの卦以外の卦も、対になっていたり、二つを合わせて一つの卦として解釈する卦もある。


爻辞

抑圧からの解放がテーマ。


初爻

咎无し。

とがなし。

自分は正しくも無いし強くも無いが、正しくて勢いのある人に引っ張ってもらえる。
それで咎められる事は無くなる。

応爻の関係性。解説が無きゃ絶対分からん。
出題してるつもりも無いんだろうけど。


二爻

田して三狐を獲る。黄矢を得る。
貞吉。

かりしてさんこをうる。こうしをうる。
ていきつ。

狩りをして三匹の狐を獲る。
その狐に刺さっていた黄金の矢も手に入れる。
幸運だがそれに甘んじなければ吉。

まるで「こんなんしょっちゅうやってますけどね」みたいな顔で。


三爻

負い且つ乗る。寇の至るを致す。
貞吝。

おいかつのる。あだのいたるをいたす。
ていりん。

自分が荷物を運ぶ仕事をしてるのに、楽をしようと車に乗る。
効率を考えたら正しいんだろうけど、それでいいのか?

解決策が不名誉。結果だけを追い求めるな。


四爻

而の拇を解く。
朋至りて斯れ孚す。

なんじのおやゆびをとく。
ともいたりてこれまことす。

悪友(自分の足の親指くらい親密な)と手を切る。代わりに良い友人が見つかる。

執着、束縛からの解放。これも応爻の関係性。


五爻

君子維れ解く有り。吉。
小人に孚有り。

くんしこれとくあり。きち。
しょうじんにまことあり。

君子として、賢者として王の為にならない臣下を解雇する。吉。
解雇された臣下も引き際を悟り素直に離れる。

大いなる解散。


上爻

公用て隼を高墉の上に射る。
之を獲て利ろしからざる无し。

こうもってはやぶさをこうようのうえにいる。
これをえてよろしからざるなし。

城壁の上に居座るハヤブサ(権力だけはある悪人)を射落とす。
良くないわけがない。

悪政からの解放。正義は必ず勝つのだ。


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