37 風火家人

37 ふうかかじん


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「おつかれー。」

カエル
「おつかれ。」

便利屋のガイコツ
「女のいいニオイがする。」

茶番をトばす。

カエル
「気持ちワルいこの人。」

便利屋のガイコツ
「誰かいたのか?」

カエル
「お客さんだよ。」

便利屋のガイコツ
「キミの?」

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「良かったじゃないの。」

カエル
「まあね。」

便利屋のガイコツ
「何占ってあげたの?」

カエル
「なんかね、ムスメさんと上手くいってないんだと。」

便利屋のガイコツ
「占う前にやる事があるんじゃないのか?」

カエル
「まあまあ。」

便利屋のガイコツ
「で、占い結果はどうだったの?」

カエル
「なんとも言えない。」

便利屋のガイコツ
「そうか。旦那さんは何してる人なの?」

カエル
「旦那はいないんだってさ。」

便利屋のガイコツ
「へー。他に家族は?」

カエル
「息子さんがいたみたいなんだけど亡くなっちゃったんだと。」

便利屋のガイコツ
「へー。ひょっとして西の山の向こうに住んでる未亡人?」

カエル
「なんで知ってるの?」

便利屋のガイコツ
「知り合いだもん。前話したじゃん。」

カエル
「そうだっけ?」

便利屋のガイコツ
「あの、ほら指輪の。」

カエル
「指輪?指輪なんかしてたっけ?」

便利屋のガイコツ
「オレが墓で拾った。」

カエル
「墓?キミの?」

便利屋のガイコツ
「違うよ。掃除頼まれてたんだよ。で、そこで息子さんの形見の指輪を拾ったんだよ。」

カエル
「息子さんの形見だったらちゃんと返して来たほうがいいよ。」

便利屋のガイコツ
「だから返したの。そのエピソードの流れで知り合いになったんだよ。」

カエル
「へー。そんな裏事情があったんだね。」

便利屋のガイコツ
「全然憶えてないじゃん。」

カエル
「全然憶えてないや。オレ。」

便利屋のガイコツ
「普段からボーッとしてるからだよ。」

カエル
「アンニュイって言ってほしいね。」

便利屋のガイコツ
「でも知り合いだから心配になっちゃうな。」

カエル
「会って来れば?」

便利屋のガイコツ
「ヤダよ。会ってどうすんのよ。」

カエル
「キミがお父さんの代わりになってあげればいいんだよ。」

便利屋のガイコツ
「オレにはできないよ。それにそんなヒマないし。」

カエル
「でも占いでは父親代わりが必要だって出たよ。」

便利屋のガイコツ
「人の占い結果は言わないほうが良いんじゃなかったのか?」

カエル
「観測者が増えれば未来が変わるともね。」

便利屋のガイコツ
「勘弁してよ。」

カエル
「なんにせよ様子だけでも見てきたら?」

便利屋のガイコツ
「前に会った時はそんな雰囲気じゃなかったんだけどな。」

便利屋のガイコツ
「じゃあ、そろそろ行くわ。」

カエル
「早速?」

便利屋のガイコツ
「違うよ。仕事だよ。」

カエル
「またね。」



風火家人
ふうかかじん


風が火の勢いを強め、燃え盛る炎は気流を生み出す。
風と火はお互いがお互いを助け合い高め合う。

理想の人間関係。家族みたいな関係。サザエさんみたいな関係。
現代では家族の形は様々だけど、良い家族の答えは昔も今も、奥さんも旦那さんも、親も子も、兄弟も変わらない。
華やかでも、慎ましくても、血がつながってても、つながってなくても変わらない。


卦辞

家人。女の貞に利ろし。

かじん。じょのていによろし。

家の中の女性が正しく家庭を守るのがよろし。

ゆえに「家内」。
住処が安全に保たれているから安心して外で仕事が出来る。
昔は家を守るのは女性の務めみたいだったけれど今はそんな時代じゃない。日々の家事をこなしてくれる人にとびっきりの感謝を。
そして一人暮らしの人は洗濯機と電子レンジと掃除機と近所の人にとびっきりの感謝を。


爻辞

中身が大事と言うお話。


初爻

閑ぎて家を有つ。悔い亡ぶ。

ふせぎていえをたもつ。くいほろぶ。

家の規律を守る。悔いが無くなる。

共通のルールとマナー。


二爻

遂ぐる攸无し。中饋に在り。
貞吉。

とぐるところなし。ちゅうきにあり。
ていきつ。

家を守るには大きな志はいらない。日々の家事を淡々とこなしていれば良い。吉。

掃除のコツは毎日する事。
できませんけど。


三爻

家人嗃嗃。
悔い厲うきあれども吉。
婦子嘻嘻たれば、終に吝。

かじんかくかく。
くいあやうきあれどもきち。
ふしききたれば、ついにりん。

家の主人が厳しく家を治める。
恐れ嫌われるかもしれないが吉。
妻や子が怠けるようになるなら、恥となる。

親しき中にもね。

家族じゃないけど奢ってあげてるとまるでそれが当たり前のようになってくるヤツいるよね。


四爻

家を富ます。
大吉。

いえをとます。
だいきち。

家事が家庭を豊かにする。大吉。

家庭が幸せならそれでいいじゃない。


五爻

王假りて家を有つ。
恤うる勿れ。吉。

おういたりていえをたもつ。
うれうるなかれ。
きち。

家を守る事の大事さが家族全員に伝わる。
心配はいらない。吉。

王様目線。王様の家は国の事。
家族とは国民の事。


上爻

孚有りて威如たれば、終に吉。

まことありていじょたれば、ついにきち。

家を守るのに誠の心と威厳があれば最後は吉。

周りの見本となる家庭。どうしても波平が頭に浮かんでくる。


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