47 沢水困

47 たくすいこん


かえるのうた

カエル
「…..またね。」

ガイコツ
「は?」

カエル
「ん?」

茶番をトばす。

ガイコツ
「起きたか。いや、今またねって。」

カエル
「何?またねって?」

ガイコツ
「いや、キミが言ったんだろ。」

カエル
「オレが?なんで?」

ガイコツ
「寝言?夢でも見てたのか?」

カエル
「どんな夢だったっけ。」

ガイコツ
「誰かと会ってた夢か?」

カエル
「覚えてねえ。でもなんか気分良かったかもしれない。あったかい部屋で、誰と話してたんだっけ……。」

ガイコツ
「まあ夢なんてそんなもんさ。現実に足りない事が夢に反映されるのさ。」

ガイコツ
「キミ、家族も友達いないだろ?」

カエル
「いるわ。」

カエル
「いや、いたんだ。今もそこにいるはずなんだ。だから会いに行かなきゃならない。」

ガイコツ
「そうか。オレもだ。」

カエル
「オレはともかくキミは無理だろ。」

ガイコツ
「そうでもないさ。」

カエル
「雨は止んだ?」

ガイコツ
「まだ降ってる。」

カエル
「そか。」

ガイコツ
「忘れてた。ほら、バッタ食え。」

カエル
「ありがとう。」

ガイコツ
「また持って来てやるよ。」

カエル
「どっから捕まえて来るの?」

ガイコツ
「ずっと西の方。」

カエル
「西は雨は降ってないのか?」

ガイコツ
「降ってないよ。」

カエル
「ここだけ?」

ガイコツ
「ここだけ。」

カエル
「そっか。」

ガイコツ
「まあ、今は体を休めてなって。せっかくオレのおかげで命拾いしたんだ。」

カエル
「感謝はしてるよ。もう死んじまったヤツに言われたくねえけど。」

ガイコツ
「それを言われるとな。とにかくもう寝ろ。」

カエル
「そうするよ。」

カエル
「またね。」

ガイコツ
「…。」




沢水困
たくすいこん


沢の水が抜け落ちて、沢としての機能や体裁を失ってる状態。枯渇。喪失。すっからかん。在るべきものが在るべきところに無くて、困り果てる。

三陰三陽の卦にして四難卦の一つ。非常に困難な状況の暗示。

四難卦の一番最後に配される。老衰の虚しさって解釈が一番しっくりくる。今まで当たり前のように出来てた事が出来なくなってくる焦りと不安、諦めや死への恐怖。若さへの渇望。暗くなるからここまで。


卦辞

困。亨る。貞し。
大人は吉にして咎无し。
言有るも信ぜられず。

こん。とおる。ただし。
たいじんはきちにしてとがなし。
ことあるもしんぜられず。

耐え抜けば順調に進めるようになる。信念を持つ大人は吉。咎められない。不平不満も口にしない。

いちいち不平不満を口にするのは小人。大人はなんにも無くても可能性に向かう。

イギリスの労働者階級の貧しい若者は、安全ピンのピアスと虫食いで穴だらけのセーターを着て、既存の音楽を破壊し、再構築した。

アメリカ西海岸のメキシコ系移民は、安物の中古車を改造して、高級車を乗り回す裕福な白人にそれを文化と認めさせた。

90年代の日本の女子高生は、決められた制服と安いルーズソックスで、ハイソサエティなギャルの遥か頭上を飛び越える。

オレはパンクロッカーでもローライダーでもコギャルでも無かったけど、若い頃ってなんにもなくても楽しかったよな。というか、何かが足りないって事がそれなりに活力になってた気がする。

この卦の核心は年老いて枯れ果てただけで困った顔すんなよって事なのかも。

ドラゴンボールに出てくる亀仙人みたいな老後がいいな。


爻辞

困(くる)しみ過ぎ。笑っちゃうくらい。老いに任せるな。若さに任せろ。


初爻

臀、株木に困しむ。
幽谷に入る。三歳覿ず。

いさらい、しゅぼくにくるしむ。
ゆうこくにはいる。さんさいみず。

座り心地の悪い切り株に座り、
お尻を痛めて苦しむ。
苦し紛れに動いて深い谷に迷い込み、
三年経っても出られない。

どこにも居場所が無い。落ち着けない。


二爻

酒食に困しむ。
朱紱方に来たらんとす。
用て亨祀するに利ろし。
征けば凶。咎无し。

しゅしょくにくるしむ。
しゅふつまさにきたらんとす。
もってきょうしするによろし。
いけばきょう。とがなし。

事を未だ成し遂げれず苦しむ。
苦しみながらも飲食で英気を養いながら待つ。
時が来れば向こうの方から求めて来る。
誠意をもって仕えるのが良い。
自ら進んで行くのは咎めは受けないが、凶。

武士は食わねど高楊枝。今はガマンガマン。


三爻

石に困しむ。蒺藜に據
其の宮に入り、其の妻を見ず。

凶。

いしにくるしむ。しつりによる。
そのきゅうにはいり、そのつまをみず。
きょう。

石に遮られて前に進めない。引き返そうにも棘のある草に遮られる。やっと家に帰れば妻が居ない。凶。

踏んだり蹴ったり。涙で前が見えない。


四爻

来たること徐徐たり。
金車に困しむ。
吝なれども終わり有り。

きたることじょじょたり。
きんしゃにくるしむ。
りんなれどもおわりあり。

助けに行きたいが邪魔をされる。丈夫な車で向かうがなかなか上手く行かない。恥をかくことになるが、目的は果たせる。

思えば自分の思い通りに行く事の方が少ないもの。過ぎた事をいつまでも引き摺ってもしょうがない。


五爻

劓り刖る。赤絨に困しむ。
乃ち徐くにして説び有り。
用て祭祀するに利ろし。

はなきりあしきる。せきふつにくるしむ。
すなわちようやくにしてよろこびあり。
もってさいしするによろし。

悪人を排除する。立場や意見の違いに苦しむが、時間を掛けて分かり合い、共に喜ぶ。神を祀るように誠意を持って接すると良い。

手段が違うだけで向かう先は一緒。


上爻

葛藟に困しむ。
于に臲卼曰く動けば悔ゆると。
悔ゆる有って征けば吉。

かつるいにくるしむ。
ここにげつごついわくうごけばくゆると。
くゆるあっていけばきち。

つるに巻き付かれて身動き出来ず、苦しむ。足場も不安定なので動くと後悔する事になるが、それを解って進むのなら吉。

困の極。ここに来て「生」を実感。何もしないで後悔するよりも、行動して後悔する方が良いと。


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