46 地風升

46 ちふうしょう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

便利屋のガイコツ
「おつかれー。」

カエル
「おつかれ。」

便利屋のガイコツ
「順調?」

カエル
「まあ順調。」

茶番をトばす。

便利屋のガイコツ
「いい出来じゃん。」

カエル
「もう少しで終わりだ。」

便利屋のガイコツ
「さすがプロ。」

カエル
「さすがプロか?」

便利屋のガイコツ
「やるとは聞いてたけど、まさかこれほどとはね。」

カエル
「やっぱりか。」

便利屋のガイコツ
「オレの手伝いはいらねえか?」

カエル
「素人は大人しく見てなって。」

便利屋のガイコツ
「じゃあ明日の仕込みでもしようかな。」

カエル
「なんの?」

便利屋のガイコツ
「ミートボール。」

カエル
「これから作るの?」

便利屋のガイコツ
「そうだよ。」

カエル
「ここで?」

便利屋のガイコツ
「ここで。」

カエル
「オレ今ここで仕事してんだけど。」

便利屋のガイコツ
「もうすぐ終わるんでしょ?」

カエル
「いや、そんなすぐには終わらないんだけど。」

便利屋のガイコツ
「じゃ、いいよ。オレは隅っこでやるから。」

カエル
「ジャマすんなよ。」

便利屋のガイコツ
「分かってるよ。」

カエル
「でもさ、」

便利屋のガイコツ
「ん。」

カエル
「ホントに売れんの?ミートボールなんてさ。」

便利屋のガイコツ
「売れるさ。」

カエル
「儲かるの?」

便利屋のガイコツ
「それはわからん。」

カエル
「なんだよ。」

便利屋のガイコツ
「でも広めなきゃ。」

カエル
「なんで?」

便利屋のガイコツ
「なんでも。」

カエル
「よくわかんないけど、あの母娘の為か?」

便利屋のガイコツ
「どうだろうね。」

カエル
「キミはやっぱりガイコツなんだな。」

便利屋のガイコツ
「どういう意味だよ。」

カエル
「ホネだけだ。」

便利屋のガイコツ
「だからどういう意味だよ。」

カエル
「ホネしかねえ。」

カエル
「出来たぞ。こんなデカい傘作ったの初めてだよ。」

便利屋のガイコツ
「大したもんだ。ありがとう。」

カエル
「いよいよ初陣か。」

便利屋のガイコツ
「そんな大げさなもんじゃないよ。初めて行く場所じゃないし。適当にバラ撒いて帰って来るさ。」

カエル
「大した余裕だな。」

便利屋のガイコツ
「ジャンクフードの王、ミートボールの速攻をお見せしよう。」

カエル
「そんなに上手く行くかね。」

便利屋のガイコツ
「まあまあ、そんなにお金もかかってないし、失敗したらそん時はそん時よ。」

カエル
「まあ、止めないけどさ。」

カエル
「オレもう疲れたから寝るよ。」

便利屋のガイコツ
「ありがとうね。オレも終わったら帰るよ。」

カエル
「おやすみ。」

カエル
「またね。」




地風升
ちふうしょう


地の下に木(風)の形。升はのぼる。昇の日の部分が無い形。今は日の目を浴びない地中の木の芽が、良質な環境に支えられて少しずつ成長していくところ。

ネットゲームなどで不正に改造したデータを使ったズルや迷惑行為をチートと言い、このチートの三文字を両サイドから圧縮して「升」と表記するネットスラングがあるが、人が経験を積みながら徐々に昇り進んで行く様を樹木の成長に例えたこの卦とはある意味真逆の意味。面白い事思いつくもんだ。

色んな人間が集まれば、その中にズルしてでも上に昇りたくなるヤツもいるわな。


卦辞

升。元いに亨る。
用て大人を見る。
恤うる勿れ。南征すれば吉。

しょう。おおいにとおる。
もってたいじんをみる。
うれうるなかれ。なんせいすればきち。

何事も思い通りに進む。偉大な人物を見習うと良い。心配はいらない。明るく穏やかな南に向かうと吉。

沢地萃は王様が人々を集めて国を興す卦。この卦はその国を大きく育てる為に共に昇り進む人々の卦。民の目線。

昇り進むとは言っても、急速に進んで行くのではなくて、樹木が成長するようにゆっくりと、じっくりと、穏やかに、緩やかに。

                        


爻辞

どんな大木も、確かな土壌と天の恵みがあってこそ。


初爻

允に升る。大いに吉。

まことにのぼる。おおいにきち。

誠意を持ってのぼる。大吉。

立身出世。目上の人に誠意を示し、引っ張り上げてもらう。


二爻

孚あれば乃ち禴を用うるに利ろし。
咎无し。

まことあればすなわちやくをもちうるによろし。
とがなし。

誠の心で上と通じているので、供物もささやかな物で良い。咎められない。

五爻の王様に助言を与える賢人。


三爻

虚邑に升る。

きょゆうにのぼる。

誰もいない村にのぼる。

自立。助けてくれる人も、邪魔する人もいない。


四爻

王用て岐山に亨す。
吉。咎无し。

おうもってきざんにきょうす。
きち。とがなし。

王は岐山を祀る。吉。咎められない。

この王は文王。殷の紂王(酒池肉林の人)に仕えていた頃の文王。その気になれば紂王に取って代わる事もできたのに、国や民の事を考え先祖を祀り、紂王の臣下であり続けた。

後にその息子の武王が殷を滅ぼし、周王朝を築いたとさ。


五爻

貞にして吉。階に升る。

ていにしてきち。かいにのぼる。

階段を一段一段のぼるように着実に進めば吉。

王道。優秀な配下に支えられ、更なる高みへのぼり進む。


上爻

冥升。息まざるの貞に利ろし。

めいしょう。やまざるのていによろし。

これ以上はのぼれない。進んではいけない。

実力以上にのぼり過ぎ、器以上に背負い過ぎ。ここが天井。


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