27 山雷頤

27 さんらいい


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい」


便利屋のガイコツ
「おつかれちゃん。」

茶番をトばす。


カエル
「久々の仕事は堪能したかね?」


便利屋のガイコツ
「筋肉痛で体中ボロボロだわ。」


カエル
「筋肉ねえだろ。」


便利屋のガイコツ
「イメージの話だよ。」


カエル
「なるほど。」


カエル
「まあとりあえず何か飲みなよ。」


便利屋のガイコツ
「コーラ飲みたい。あとハンバーガーとフライドポテト食べたい。」


カエル
「ねえよ。自分で買ってきなよ。」


便利屋のガイコツ
「キミがハンバーガー屋さんだったら良かったのにな。」


カエル
「今日はなにやってたの?」


便利屋のガイコツ
「となりのアパートの住人の引っ越しの手伝い。」


カエル
「仕事に幅が出てきたね。」


便利屋のガイコツ
「いや、ソイツが来た時も大家に頼まれて手伝った事あるんだ。」


カエル
「そうなんだ。」

便利屋のガイコツ
「来たと思ったらすぐいなくなっちゃった。」


カエル
「仲良かったの?」


便利屋のガイコツ
「全然。出会いと別れの思い出しかないよ。」


便利屋のガイコツ
「でもあんまり元気なかったような気がする。新しい住処も安アパートだったし。」


カエル
「仕事何してた人なの?」


便利屋のガイコツ
「知らない。けどちゃんと働いてはいたようだったよ。」


カエル
「ヘー。また金貸したろ。」


便利屋のガイコツ
「貸してないよ。」


便利屋のガイコツ
「代金を貰わなかったんだよ。引っ越し祝いでね。」


カエル
「お人好しだな。」


便利屋のガイコツ
「なんだか塞ぎ込んでるようだったからさ。武士の情けだよ。」


便利屋のガイコツ
「ちょっと占ってみてくれない?」


カエル
「何を?」


便利屋のガイコツ
「ソイツがこの先上手くやれるかどうか。」


カエル
「友達でもなんでもないヤツなんでしょ?」


便利屋のガイコツ
「いいから。」


カエル
「キミが占えよ。」


便利屋のガイコツ
「わかった。今日引っ越して行ったよく知らないヤツの今後。」


カエル
「雑だなあ。」


便利屋のガイコツ
「雑占いだからな。」


カエル「占いですらないけどな。」


便利屋のガイコツ
「出た。下が雷で上が山だから、」


カエル
「山雷頤。変爻は五爻か。なんだったっけ?」


便利屋のガイコツ
「キミが知らないんじゃオレだって知らない。」


カエル
「本読んでんだろ?」


便利屋のガイコツ
「読んでるというか自分で出した卦のページだけ読んでる。それはまだ出てないから読んでない。」


カエル
「真っ当な使い方だな。」


カエル
「あった。」


便利屋のガイコツ
「どういう意味?」


カエル
「頤は下アゴって意味。要は口の作用の事。食べたり飲んだり、しゃべったり。」


便利屋のガイコツ
「うん。」


カエル
「自分にとって必要なモンを必要なだけ取り込むなら吉。」


便利屋のガイコツ
「欲張るなって事?確かにあんまりガツガツした感じのヤツじゃなかった。」


カエル
「欲張るなってよりは見極めろって意味だと思う。自分にとっての栄養になるモンをさ。」


カエル
「自分に必要なモンなんかその時々で変わるからさ、昔欲しかったモンにこだわったり、人から勧められたってだけの理由で自分に取り込むのは良くないよって。」


便利屋のガイコツ
「なるほど。」


カエル
「ソイツの今後について雑に占ったんなら単純に食べる分には困らない位の生活はして行けるんじゃないかな。」


便利屋のガイコツ
「ホントに?良かった。」


カエル
「之卦も風雷益だし、引っ越し先で誰かの援助があるかもしれない。」


便利屋のガイコツ
「そうか、じゃあアイツは自分が必要に感じて引っ越しをしたんだな。」


カエル
「それとも飲食関係の仕事に縁があったのかも。」


便利屋のガイコツ
「ハンバーガーショップとかやらねえかな、アイツ。」


カエル
「ハンバーガーから離れろよ。」


便利屋のガイコツ
「でもこの卦の形もハンバーガーに見えなくもないよ。」


カエル
「そうだね。きっとソイツは新しい土地でハンバーガーショップで働くよ。」


便利屋のガイコツ
「キミの占いは当たるからな。」


カエル
「オレは占ってないよ。」


便利屋のガイコツ
「せっかくだから今日の晩メシはハンバーガーにしよう。」


カエル
「そんなモンばっか食ってると早死にするよ。」


便利屋のガイコツ
「もう死んでる。」


カエル
「イメージの話だよ。」


便利屋のガイコツ
「なるほど。」


便利屋のガイコツ
「じゃあまた来るよ。」


カエル
「またね。」



山雷頤
さんらいい


山の下で雷が鳴り響く。
外卦の艮を上アゴ、内卦の震を下アゴに見立てて全体的に口の形を作ってる。
「頤(おとがい)」は下アゴという意味で、口の動き。働きの事。
つまり飲食をもって養うという意味。

食べなきゃ生きていけないし育たない。
元気があればなんでもできるけど、元気がなければなにもできない。

ちなみにこの卦の下から四番目の陰が陽になっているのが「火雷噬嗑」で、こっちは異物が口に入り込んでしまい上手く口が動かせないから無理やり噛み砕くという意味の卦。


卦辞

頤。貞しければ吉。
頤を観て自ら口実を求む。

い。ただしければきち。
いをみてみずからこうじつをもとむ。

自分の身に吸収するものが正しいものなら吉。
自分に必要なものを選んで求める。

人の世話になったり世話してやったり。

全然関係ないけど人間も他の動物と一緒で、食べさせるものである程度コントロール出来るって話を何かで読んだのを思い出した。

オレは今の今まで何を食わされた?


爻辞

養われても飼いならされるな。


初爻

爾の霊亀を舎て、
我を観て頤を朶る。凶。

なんじのれいきをすて、
われをみておとがいをたる。きょう。

貴重な占い用の亀を自分で持ってるのに、それを捨てて、他人の物を見て羨ましがる。凶。

隣の芝はいつだって青く見えるさ、そりゃ。

人は人。自分は自分。


二爻

顛に頤う。
に拂る丘において頤う。
征けば凶。

さかしまにやしなう。
つねにもとるおかにおいてやしなう。
いけばきょう。

自分より下の者に養われる。縁のある者で仕方なく養われてるうちはまだいい。無関係の者に養われに行くようなら凶。

身内に頭を下げれない事で失敗するパターン。
余計な借りを作って、いいように利用されるよりはね。


三爻

頤いに拂る。貞くすれば凶。
十年用うる勿れ。
利ろしき攸无し。

やしないにもとる。かたくすればきょう。
じゅうねんもちうるなかれ。
よろしきところなし。

養われるにもほどがある。考えを改めなければ凶。
十年用いてはいけない。

ヒモ野郎。今だけなんだろ?


四爻

顛に頤う。吉。
虎視眈眈。其の欲逐逐。

咎无し。

さかしまにやしなう。きち。
こしたんたん。そのよくちくちく。
とがなし。

自分より立場が下で優秀な者に養ってもらう。吉。
虎が獲物を狙うように何かを得ようと様子を伺う。
そしてどこまでも追い求める。咎なし。

こしたんたん。

今の若い連中はなんでも知ってるからな。勉強になる。


五爻

経に拂る。貞に居るに吉。
大川を渉る可からず。

つねにもとる。ていにおるにきち。
たいせんをわたるべからず。

君主の身でありながら民を養う力が無い。
身の程をわきまえて本来の立場に戻れば吉。
実力不足なので今は大きな事をするべきではない。

こっちも無理しておごってくれなんて頼んでない。


上爻

由りて頤う。厲うけれども吉。
大川を渉るに利ろし。

よりてやしなう。あやうけれどもきち。
たいせんをわたるによろし。

本来は君主(五爻)に養われるべき人々がすでに引退した先代(上爻)の元に集まってくる。
あまり良くない事だが、先代はあらかじめ対策を練っていたので吉。
大きな事をしても良い。

親が小遣いをくれないからおじいちゃんにたかる子供。あげちゃうおじいちゃん。


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