28 沢風大過

28 たくふうたいか


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」


便利屋のガイコツ
「いや、疲れた。」


カエル
「忙しそうじゃん。」


便利屋のガイコツ
「おかげさんでね。」

茶番をトばす。


便利屋のガイコツ
「せっかくキミの倉庫貸してもらってるのになかなか帰って来れない。」


カエル
「ちゃんと寝てんの?」


便利屋のガイコツ
「寝てるよ、車で。」


カエル
「ダメだよ、ちゃんと寝ないと。」


便利屋のガイコツ
「今だけだよ。遠出と重量物の運搬を頼まれたんだよ。」


カエル
「なに飲んでんの?それ。」


便利屋のガイコツ
「これ?1本1500円の栄養ドリンク。」


カエル
「高いな。しかも何本買って来てんだよ。」


便利屋のガイコツ
「5本。このあとまた行かなきゃならないんでね。」


カエル
「それ全部今日飲むの?」


便利屋のガイコツ
「そうだよ。効くのよコレが。」


カエル
「でも栄養ドリンクってこんなに1日に何本も飲むもんじゃないんじゃない?」


便利屋のガイコツ
「足りないぐらいなんだけど。」


カエル
「いくら効くからって1日5本は致死量だろ。」


便利屋のガイコツ
「大丈夫。もう死んでるから。」


カエル
「それを言われるとな。」


カエル
「でも1500円を1日5本って7500円よ?」


便利屋のガイコツ
「そうだよ。」


カエル
「キミがその仕事でいくら貰ってるか知らないけどもっと安くて栄養のあるモンいっぱい売ってるじゃん。肉とか魚とか野菜とかさ。」


便利屋のガイコツ
「もちろん食ってるよ。団子も。」


カエル
「じゃあ栄養ドリンクいらないじゃん。」


便利屋のガイコツ
「でもこれがあるとないのとじゃ全然違うんだよな。」


カエル
「寝ないからでしょ、だから。」


カエル
「きっと身体が求めてるのが栄養じゃなくて睡眠なんだよ。」


便利屋のガイコツ
「そうかな。」


カエル
「結局自分に合った寝具と充分な睡眠以上の健康法なんてこの世に存在しないんだから。」


便利屋のガイコツ
「健康商品の営業みたいな言い回しだな。」


カエル
「オレはずーっと前から提唱してんだよ。」


便利屋のガイコツ
「確かによく寝るし、動かないし、家からも出ない。」


カエル
「仕事はしてるんだからいいだろ。」


便利屋のガイコツ
「ちなみに昨日は何時間寝たのよ?」


カエル
「12時間くらい。」


便利屋のガイコツ
「それはそれで寝すぎじゃないか?」


カエル
「だって眠たいんだもん。」


便利屋のガイコツ
「ずっと寝てるからでしょ?朝ちゃんと起きないし体も動かさないから脳みそが覚醒してないんだよ。ずっと。昔っから。」


カエル
「そんな昔からの付き合いじゃねえ。」


便利屋のガイコツ
「だからいつもボーッとしてるし動きもカエルのくせにモタモタしてんだよ。そういうのを世間一般ではデイドリーマーって言うんだよ。」


カエル
「うるせえ。」


便利屋のガイコツ
「ちゃんとジャンプ出来る?普通のカエルみたいにさ?」


カエル
「今日はちょっと関節が痛いから無理。」


便利屋のガイコツ
「ほら、もう飛べないじゃん。全然健康じゃないじゃん。もう寿命じゃん。」


カエル
「いいんだよ。暖かい布団で寝る為に生まれて来たんだから。オレは。」


カエル
「そんな1本1500円もする栄養ドリンクでギンギラギンになってまで働きたいとは思わないね。そっちこそただのジャンキーじゃん。ワーカホリックじゃん。」


便利屋のガイコツ
「だから今だけだって。」


カエル
「なんかこれからもいいように安く使われそうな気がするよ。」


便利屋のガイコツ
「大丈夫だよ。本当に欲しいのはお金じゃないから。」


カエル
「そうだとしても金持ちじゃないんだから金欲しがってるフリはしとけよ。」


便利屋のガイコツ
「よくわかんねえ。」


カエル
「とにかくそこらのモンスターハンターじゃないんだからあんまり訳分からん仕事安請け合いすんなよ。」


便利屋のガイコツ
「アイツらも昔っから割に合わない仕事ばっかしてるな。」


カエル
「アイツらがオトモアイルー達に給料払ってるトコ見たことねえよ。」


便利屋のガイコツ「カワイイし、あんなに頑張ってるのにね。」


カエル
「全くだ。」


便利屋のガイコツ
「じゃあ。もうひと頑張りしてくるよ。」


カエル
「ムリすんなよ。」


便利屋のガイコツ
「わかってるよ。」


カエル
「またね。」



沢風大過
たくふうたいか


水たまり(兌)に木(巽)が沈んでる卦。

真ん中に陽爻が四本並んでいて強すぎる。必要以上。やり過ぎという意味。

みんなで同じことやっててもしょうがない。

大過という卦名は、大いに過ぎる事。大きな過ちという意味。


卦辞

大過。棟橈む。
往く攸有るに利ろし。亨る。

たいか。むなぎたわむ。
ゆくところあるによろし。とおる。

棟木(屋根を支える横木)の中心に負荷がかかってたわむ。
手遅れになる前に気付いてよろし。

危険は危険。

卦を横に倒すとそう見えなくもない。


爻辞

何事も適度に分相応にってのは分かってるつもり。
でもそれだけじゃあね。


初爻

藉くに白茅を用う。咎无し。

しくにはくぼうをもちう。とがなし。

敷物に白い茅(ちがや)を使う。
咎められない。

私はみんなの緩衝材になりたい。

何事も丁寧、丁寧、丁寧に。


二爻

枯楊稊を生ず。
老夫其の女妻を得。
利ろしからざる无し。

こようていをしょうず。
ろうふそのじょさいをう。
よろしからざるなし。

枯れた柳から新しい芽が生えてきた。
老いた男が若い娘を妻にする。
良くないわけがない。

まあ結局は相性にもよるんだけどさ。


三爻

棟橈む。凶。

むなぎたわむ。きょう。

棟がたわむ。凶。(そのまま)

荷が重いし。誰も助けに来ない。

泣きを見るよりは逃げ腰のままでいい。


四爻

棟隆し。吉。它有れば吝。

むなぎたかし。きち。た あればりん。

まっすぐで、ガッシリとした棟。吉。
他に気を回すと恥をかく。

一番おさまりが良い。しっくりくる。

適材適所。


五爻

枯楊に華が生ず。
老婦其の士夫を得。
咎无く誉れ无し。

こようにはながしょうず。
ろうふそのしふをう。
とがなくほまれなし。

枯れた柳に花が咲く。
老いた女が若い男と結婚する。
咎められる筋合いはないけど、褒められたことでもない。

自然の摂理ではないけど、人間なんだからこんな事もある。

トゥルーロマンス。


上爻

過ぎて渉る。頂きを滅す。凶。
咎无し。

すぎてわたる。いただきをめっす。きょう。
とがなし。

自分の力量を省みず、川を渡ろうとして溺れる。凶。
捨て身の行為は誰にも咎められない。

玉砕覚悟で本当に玉砕しちゃった。
カッコつけないでやり過ごせ。


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