32 雷風恒

32 らいふうこう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい」

便利屋のガイコツ
「どもども。」

カエル
「コレ頼むわ。」

便利屋のガイコツ
「ついに完成か。」

茶番をトばす。

カエル
「うん。」

便利屋のガイコツ
「おめでとう。」

カエル
「ありがと。」

便利屋のガイコツ
「とりあえずパチンコ屋と駅と前にバイトしてたコンビニに置いてくるよ。」

カエル
「コンビニは営業妨害になりそうだからやめて。」

便利屋のガイコツ
「それ言ったらどこに置いたっておんなじだよ。」

カエル
「言われてみればそうだよな。」

便利屋のガイコツ
「言われたら止めりゃいいさ。とりあえず置いてみよう。」

カエル
「大丈夫かな?」

便利屋のガイコツ
「大丈夫だよ。多分。」

カエル
「せめてちょっと離れたトコロに置いてくれない?」

便利屋のガイコツ
「わかったよ。」

便利屋のガイコツ
「そういやなんで傘屋やってんだっけ?」

カエル
「傘屋じゃないよ。雨具屋だよ。」

カエル
「この地方が雨以外の日が無いからだよ。前にも言ったじゃん。」

便利屋のガイコツ
「でもここに来る前から傘というか雨具は作ってたし治してたんだろ?」

カエル
「そうだよ。」

便利屋のガイコツ
「なんで?」

カエル
「傘ってさ、」

便利屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「この形になってから300年間基本的な構造は変わってないんだ。」

便利屋のガイコツ
「ホントかよ。」

カエル
「ホントだよ。」

便利屋のガイコツ
「調べるよ?」

カエル
「別にいいよ。」

便利屋のガイコツ
「なんだよ。全然違うじゃん。」

カエル
「は?違わないですけど。」

便利屋のガイコツ
「でも4000年前って書いてあるよ。」

カエル
「ウソ?そんな昔からあるの?傘って。」

便利屋のガイコツ
「書いてあるもん。」

カエル
「いやそれはまだ畳めないタイプのヤツだろ。この形になってからだよ。」

便利屋のガイコツ
「ああ。」

カエル
「だから傘ってのはこのままの形でいつまでも有り続けるモンなんだ。」

便利屋のガイコツ
「傘を作れて治せれば食いっぱぐれないって事?」

カエル
「うん。場所や時代や使い方が変わっても傘は傘で有り続けるんだ。」

便利屋のガイコツ
「雨が降らなくても?」

カエル
「雨が降らなくても。」

便利屋のガイコツ
「そういうもんかね。」

カエル
「傘に限った話じゃないけどさ。」

カエル
「変わらないモンがあるから、変わる側も安心して変われるんだよ。」

便利屋のガイコツ
「ふーん。キミが傘みたいに変わらない存在になりたいって事?」

カエル
「いや、例えばオレが変わっても、どこに行っても傘は存在し続けるって話なんだけど。」

便利屋のガイコツ
「どっか行くの?」

カエル
「行かないけどさ。」

便利屋のガイコツ
「キミがいなくなったらまた退屈になるな。」

カエル
「だから行かないって。それにいつもプラプラどっか行ったり来たりしてんのはキミだろ。」

便利屋のガイコツ
「オレなんかこの町から動いた事ねえんだけどなー。」

便利屋のガイコツ
「まあいいか。またどっかプラプラして来るわ。」

カエル
「傘お願いね。」

便利屋のガイコツ
「任された。」

カエル
「またね。」



雷風恒
らいふうこう


欧米では「Book of Changes」(変化の書)と訳される易経の中で珍しく恒久、変化しない事にスポットを当てた卦。

沢山咸が若い男女の感情の卦ならこの卦は壮年の男女、夫婦の在り方の卦。
恒久とか、不変とか。

もちろん夫婦はこうじゃなきゃダメって卦じゃなくて自分にとっての変わらないもの、変えたくないものとの向き合い方を壮年の夫婦に例えてる。

幸せそうな夫婦に対する高評価はいつの時代も変わらない。みんながみんな出来る事じゃないから。

ひょっとしたら幸せな夫婦像に不変の価値があるから色々な価値観が生まれては消え、また生まれては消えて行くのかも知れないですね。そんなことはないか。

ちなみに三陰三陽で異性に縁がある。


卦辞

恒。亨る。咎无し。貞に利ろし。
往く攸有るに利ろし。

こう。とおる。ていによろし。
ゆくところあるによろし。

一途に継続すれば目的は成就するし人から非難もされない。

好きなものを好きで居続ける一貫性は大事。


爻辞

気長に、肩の力を抜いてね。


初爻

恒を浚くする。貞しけれども凶。
利ろしき攸无し。

つねをふかくする。ただしけれどもきょう。
よろしきところなし。

最初から深みにはまる。それが正しい事でも凶。
全然良くない。

それだけで人生終わらすつもりか?てのをゲームばっかりやってる小学生の甥とレンタルビデオ店でAV借りてきて再編集しながらダビングしてた22歳の頃のオレに言いたい。


二爻

悔い亡ぶ。

くいほろぶ。

後悔が無くなる。

超短い。
継続してきた事に後悔なんてない。
誰も褒めてくれなくても自分で自分を褒めろ。


三爻

其の徳を恒にせず。
或いは之に羞承く。
貞吝。

そのとくをつねにせず。
あるいはこれにはじをうく。
ていりん。

変わらずに継続する事が出来ない。
夫婦でいえば浮気するか、されるか。
どっちにしても恥をかく。

わかる。飽きっぽいから。


四爻

田して禽无し。

かりしてきんなし。

狩りに出たが獲物がいない。

長く続けてればこんな日もある。


五爻

其の徳を恒にす。
貞しくするは婦人は吉。
夫子は凶。

そのとくをつねにす。
ただしくするはふじんはきち。
ふしはきょう。

一途に夫に従う妻は吉。
しかし妻に夫が従うのは凶。

そんな事はないけどね。
一般論ではね。


上爻

恒を振るう。凶。

こうをふるう。きょう。

変わらずに継続してきたものをヤメる。凶。

凶というかただただ勿体ないか。
でも、ヤメたきゃヤメればって気持ちは心のどこかにはどうしてもある。
自分が変わらなくても状況や取り巻く環境が勝手に変わって行くなら。


コメントを残す