06 天水訟

06 てんすいしょう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

コンビニ店員のガイコツ
「おつかれ。」

カエル
「おつかれ。」

茶番をトばす。

コンビニ店員のガイコツ
「どうぶつの森買った?」

カエル
「買った。」

コンビニ店員のガイコツ
「オレも買った。」

コンビニ店員のガイコツ
「やっぱり面白いね。」

カエル
「うん、面白い。まだ始めたばっかだけど。」

コンビニ店員のガイコツ
「かわいい。」

カエル
「うん、かわいい。
クローゼットの一人ファッションショーかわいい。」

コンビニ店員のガイコツ
「虫がリアルで気持ち悪い。」

カエル
「うん、気持ち悪い。ふなむし本当に嫌い。」

コンビニ店員のガイコツ
「思ったより島が広くなかった。」

カエル
「ちょうどいいと思うよ、広いゲームのやり過ぎじゃない?」

コンビニ店員のガイコツ
「家建てた?」

カエル
「うん、建てた。部屋増やしたからしばらくローン地獄だ。」

コンビニ店員のガイコツ
「うんうん。」

コンビニ店員のガイコツ
「なんかさ、花を一か所にまとめて咲かせてムシ取るのが良い稼ぎになるっぽい。」

カエル
「マジで?」

コンビニ店員のガイコツ
「40万なんかすぐだ。」

コンビニ店員のガイコツ
「あとね、夜に離島ツアー行ってタランチュラ狩り。」

カエル
「やってみるよ、ありがとう。」

コンビニ店員のガイコツ
「時間飛ばすんならもっと楽なのあるみたいだけど。」

カエル
「オレはしばらく飛ばさないわ。」

カエル
「なんでこんなにノンビリ出来るゲームなのにバタバタしなきゃならんのよ。」

カエル
「このゲーム時間進めてまでやりたいならもっと他にいいゲームあると思うけどな、マイクラとかさ。」

コンビニ店員のガイコツ
「でもこのゲーム現実とおんなじ時間が流れてるから夜しか出来ない人はずっと夜よ?その逆もあるし、仕事もあるし、ほかのゲームもあるしさ。」

カエル
「そういう人達はしょうがないけどさ、時間進めて金増やして家増築して島いじり倒してオレ人より早く進んでて偉いとか、ガキじゃねえんだから。」

コンビニ店員のガイコツ
「ほとんど子供がやってんだけどね、このゲーム。」

カエル
「一番いい年した大人が楽しめるゲームだと思うんだけどな。理想の老後を疑似体験出来るからさ。」

コンビニ店員のガイコツ
「は?」

カエル
「うん、若くて健康で寿命も無い体を手に入れてさ、自分だけじゃなくて周りの人たちもそれはおんなじで、悪いヤツ一人もいなくて、虫とか魚とか金に換えてくれるしさ、衣食住も揃ってる。そんな老後最高じゃん。」

コンビニ店員のガイコツ
「そう聞くとなんだか虚しい気持ちになっちゃうけどな。」

カエル
「そう?みんなの夢だろ。理想郷じゃん。」

コンビニ店員のガイコツ
「まあ、人生の果てにそんな世界が待ってたら最高だろうね。」

カエル
「でも実際は老いるし死ぬんだからさ、ゲームの中だけでものんびりすればいいのに。」

コンビニ店員のガイコツ
「逆に老いるし死ぬから、人生がいつまで続くかわかんないから、その時その時の自分の理想を完成はさせたいんじゃない?駆け足してでも、時間進めてでも。」

カエル
「それは仕事とかプロフェッショナルの世界の話じゃん。ゲーム出来る環境なんだからさ、満喫してさ、雰囲気に浸ってさ、胸を張って現実から目を逸らそうよ。」

コンビニ店員のガイコツ
「逸らさねえよ。実生活あってのゲームだろ。」

カエル
「だからって時間操作なんてJOJOのボスキャラが使う能力じゃん。発想が邪悪なんだよ。」

コンビニ店員のガイコツ
「全然邪悪でもチートでもねえよ。ただ先に進みたいだけだよ。自分なりにゲームクリアをしたいんだよ。」

コンビニ店員のガイコツ
「なんの話してたんだっけ?」

カエル
「あつまれどうぶつの森。」


カエル
「でも確かにこのゲームは自分で終わらせようとしないといつまでもズルズルと遊べちゃうからね。」

コンビニ店員のガイコツ
「後半もう消化試合みたいなもんだからな。」

カエル「だからそうなってからでもよくない?時間飛ばすの。家具全部カタログに載せたいとかさ、取りこぼした虫とか魚とか捕まえる時とかでさ。」

コンビニ店員のガイコツ
「だからその人らは最初から視野に入れてんのさ。ゲームの終局を。後先考えてさ。」

カエル
「なんか窮屈だ、やっぱりオレはのんびりやりてえ。そこで生活してる感とか思い出とかも大事にしたいし、ゲームでしかないけどさ、先の事とか終わりなんて急いで知りたくないね。」

コンビニ店員のガイコツ
「先の事知りたいから占いやってんじゃないの?」

カエル
「オレが知りたいのは上と下の事だよ。天の動向と自分の立ち位置。」

コンビニ店員のガイコツ
「ふーん。」

コンビニ店員のガイコツ
「まあ、どう遊んでも楽しめるから結果このゲームがすげえってだけの話なんだけどね。」

カエル
「ここまで語っといてなんだけどね。」

コンビニ店員のガイコツ
「そろそろ仕事行ってくるよ。」

カエル
「今日は占わんの?」

コンビニ店員のガイコツ
「今日はいいよ、適当に占っといて。」

カエル
「ヤダよ、どうぶつの森やるよ。」

コンビニ店員のガイコツ
「そか、じゃまた来るわ。」

カエル
「またね。」



天水訟
てんすいしょう


昇り進む天と、流れ落ちる水。互いに相容れない相反する性質かというと実はそうでもない。

一旦地上に降り落ちた雨も、川を流れて海に辿り着き、雲になってまた天へ昇る。居場所は一緒。今はただ道を違えただけ。


卦辞

訟。孚有りて窒がる。
れて中すれば吉、終われば凶。
大人を見るに利ろし。

大川を渉るに利ろしからず。

しょう。まことありてふさがる。
おそれてちゅうすればきち、おわればきょう。
たいじんをみるによろし。
たいせんをわたるによろしからず。

例え自分が正しくても、相手も自分が正しいと思ってるので通らない。
互いに認め合って譲歩すれば吉。
お互い譲らず、いつまでも揚げ足を取り合うようなら凶。
大人を見習う事。
あまり大きな事はしない方がいい。

訟は訴え。訴訟、裁判。なんだか穏やかじゃないしあんまり経験もない。

正義と正義のぶつかり合い。方や弱者。方や権力者。もちろん強い方の意見が通りやすい。弱者の意見は大体は蔑ろにされる。

そうならないようにお互いの意見を中立な立場で裁く絶対的な立場が必要で、それすらも当てにならないなら、今はただ黙ってその場を離れる。


爻辞

裁判、訴訟の話。基本的には自分の意見は通らない。
でも争わない事、不平不満を言わない事が時に大事。
なんかわかる気がする。


初爻

事する所を永くせず。
小しく言有るも終に吉。

ことするところをながくせず。
すこしくことあるも、ついにきち。

ちょっと言いたい事があったけど、
途中で言うのをやめた。
結果的にはそれで吉。


二爻

訟を克くせず。帰りて逋がる。
其の邑人三百戸、眚无し。

うったえをよくせず。かえりてのがる。
そのゆうじん さんびゃっこ、わざわいなし。

勝ち目無し。逃げる。
自分が退いたおかげで周りの人達が巻き込まれずに済む。


三爻

旧徳に食む。
貞しくすれば厲ういが終に吉。
或いは王事に従うも、成すこと无し。

きゅうとくにはむ。
ただしくすればあやういがついにきち。
あるいはおうじにしたがうも、なすことなし。

今まで通りの仕事に戻る。
言いたい事もあるけど、黙って普段通りの仕事をする。
仕事が上手くいっても自分の手柄にしないで人に譲ってあげる余裕。

今はやせ我慢。


四爻

訟を克くせず。
復りて命に即き、渝て、
貞に安んずれば吉。

うったえをよくせず。
かえりてめいにつき、かえて、

ていにやすんずればきち。

不満爆発。
でもやっぱり勝てないので帰る。
そもそも不平不満を持たない事が正しいと悟る。吉。

やりたきゃやれ、やりたくないならやめろ。言葉ではなく行動で示そう。吉。


五爻

訟、元吉。

うったえ、げんきつ。

訴えが通る。
なぜか、
それは裁く人が素晴らしく立派な人だから。大吉。

どこにでも話を聞いてくれる人はいる。


上爻

或いは之に鞶帯を賜う。
終朝三たび之を褫く。

あるいはこれにばんたいをたまう。
しゅうちょうみたびこれをひく。

勝つには勝ったけどやり過ぎて今度は自分が周りから非難される羽目に。

結果だけを追い求めるな。


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