易占いと、物語的日常と、カエルとガイコツ。

昼下がりの。

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守衛が二人…。守衛と言うよりはカンザキに雇われたチンピラか。

流石にもうみんな引き上げちまったか。

そりゃそうだ。爆発事故がヤラセなんだから、警察には事故処理だけさせて用済み。お目当てのタネも工場には無いんだから、COM社とカンザキはタネ探しにおおわらわ。

タクミちゃんは今頃面談中だろうか。

どのみちアイツらがいるんじゃな…。

しばらく待って、様子を見るか。

シン
「良い天気だな。空は高く青く、広く遍く。いつも通り澄み渡ってる。」

昨日の夜が異常だったんだ。

あの黒い星。
見たら死んじまう凶星だと言われたら信じちまうくらいの不吉を孕んだ黒い星。
向こうから邪悪なドラゴンが火を吐きながら飛んで来そうなこの世の終わりみたいな夜空。

でも、今朝の八時にちゃんとオレは死なずに目が覚めて、カーテンを開けてもこの世は終わってなかった。

いつも通りに今日はきちんと始まってる。そのいつも通りってのも、オレの主観でしかないが。

シン
「?」

あれは…?

タクミちゃんだ。なんだか機嫌悪そうだが面談は終わったみたいだな。

シン
「タクミちゃん!」

タクミ
「?」

タクミ
「あ、義兄さん。こんなトコで何してんの?」

シン
「ああ、久しぶりの里帰りだからな。車で色々回ってる。」

タクミ
「なーんも変わってないでしょ?」

シン
「思ったよりはな。」

タクミ
「ゴンは?」

シン
「スロット打ちに行った。」

タクミ
「あのバカ。」

シン
「面談は終わったのか?」

タクミ
「それがちょっとメンドい事になっちゃってさ、」

シン
「ほう。」

タクミ
「これから社長に会いに行かなきゃならないの。」

シン
「社長?」

タクミ
「カンザキさんって人。」

シン
「ああ…。」

シン
「どこに?」

タクミ
「あの丘の上。」

シン
「あそこまで歩くつもりか?」

タクミ
「車出してくれるって言われたけど、ムカついてたから断っちゃった。」

シン
「送ってやるよ。」

タクミ
「いいの?ありがとう。」

シン
「何かあったのか?」

タクミ
「…色々ね。」

シン
「ふーん。色々って?」

タクミ
「…泥棒が入ったんだって。」

シン
「マジかよ…。」

マジかよ…あっさり喋っちまった。

全く。嘘が付けないと言うか、口が軽いと言うか、オレを信頼してくれてると言うか…。

こんなコがCOM社の内通者なんて務まるはずがねえ。夜中の工場に忍び込んで人に言えない事なんて出来るはずがねえ。

それはわかってる。じゃあ、昨日オレが見たのは?って話だ。

タクミ
「大マジなんだよ。」

シン
「何を盗まれたんだ?」

タクミ
「大事な物。」

シン
「ふーん。大事なモノって?」

タクミ
「私の口からはちょっとね。義兄さんはCOM社の人に聞いた方が早いよ。」

シン
「…タネ。」

タクミ
「知ってるんじゃん。」

シン
「そういうモンがあるって事だけはな。」

シン
「なんなんだ?‪”‬ タネ︎︎‪ ”‬って?」

タクミ
「ただの従業員だから私は何も知らされてないんだよ。」

タクミ
「義兄さんが知ってるんなら聞きたいくらいだよ。」

シン
「オレなんかもっと部外者だもの。」

タクミ
「だよね。」

シン
「どんな形とか、なんの為のモノかとかも?」

タクミ
「ぜーんぜん。」

シン
「そうか。そのタネとやらが盗まれたら、やっぱり大事なのか?」

タクミ
「オオゴトなんてモンじゃないよ。おかげでこっちは休み潰されてさ、いい迷惑だよ。」

同感だ。いい迷惑だ。

ここにカンザキが…。

てっきりカンザキグループの本社かなんかだと思ったが、ただの工場じゃねえか。
ここには守衛が一人だけ…。武装はしてるみたいだがボスがいるんだろ、もっと用心した方がいいんじゃないのか?

タクミ
「ここで良いよ。」

シン
「ん。」

シン
「…別に休み中に盗まれちまったんならタクミちゃんのせいにはならんだろ。それはセキュリティの問題じゃねえのか?工場側の落ち度だろ。全部。」

まあ、オレ達COM社側がそのセキュリティを破ったんだが。

タクミ
「そうだよっ!絶対セキュリティの問題なんだよっ!
なんで一従業員でしかない私がカレシと過ごした夜の事まで事細かに説明しなきゃならないんだよ!プライバシーの侵害だよ!」

シン
「まあまあ。ここまで聞いてる感じだとタクミちゃん抜きでも解決しそうなもんだけどな。」

タクミ
「それがねー…。」

シン
「?」

タクミ
「私も何がなにやら分からないんだけどさ、
あの夜‪ ”‬ 私︎︎ ︎‪”‬ が研究室から退室した痕跡が残ってたんだって。」

シン
「…。」

シン
「や、やっぱりタクミちゃんがやったのか?」

タクミ
「違うって。やっぱりってなんだよ、私じゃないんだって!出入口にある認証装置が何故か泥棒を私と認識しちゃったんだよ。」

シン
「じゃあ、それも犯人が装置を弄ったかなんかしたんだろ。」

タクミ
「上司もそう言ってくれてるけど、それだとまた不可解な点が…。」

シン
「何が?」

タクミ
「一昨日私が退室した時と、昨日の夜の退室記録はあるんだけど、その間の入室記録が無いんだよ。」

シン
「別のところから入ったんじゃないのか?」

不可能なはずだ。だから盗みではなく確保。COM社が来るまでの研究室の隔離が目的だったんだ。

タクミ
「別のところから入ったんならさ、またそこから出ればいいじゃん。なんでわざわざ私のせいにして普通に出入口から出る必要があんのよ。」

シン
「確かに辻褄が合わねえ。余程の理由がない限り、工場の構造に精通してない限り、入った所から出るのが筋だ。
タクミちゃんに罪を着せたいなら入室記録は必須だろうし。
…ちなみにだけど退室したフリをして中に残る事は可能か?」

そういう問題じゃない。問題なのは昨日、オレが目撃したのがキミかキミ以外かだ。

タクミ
「ねー、義兄さんまで疑わないでよもー。」

シン
「冗談だよ。」

タクミ
「やった事無いからわかんないよ!」

シン
「だよな。」

シン
「そういえば、オレの事もなんか話したか?」

タクミ
「義兄さんの事?聞かれなかったから私も話してないよ。なんで?」

シン
「いや、一応オレ、COM社と繋がってるしさ。タクミちゃんがそんな状況の今、身内にちょっとでも内情を知ってるヤツがいたらややこしくならないか?」

タクミ
「関係ないよ、とにかくそのタネパクりヤロウにめちゃくちゃムカついてんだから私は!
犯人が捕まるんなら、私の疑いが晴れるなら、どんな事でも協力するつもりだよっ。その時は義兄さんも手伝ってよね!」

守衛の男
「ここで何してる?」

シン
「ああ、悪い。なんでもねえ。このコをカンザキさんの所にお連れしたんだ。」

守衛の男
「アポは取ってるのか?」

タクミ
「ツキモリ・タクミです。第一工場から連絡が行ってるはずです。」

守衛の男
「身分証はあるか?」

タクミ
「これで。」

守衛の男
「確認する。少し待ってろ。」

タクミ
「本当に私じゃないんだよ?」

シン
「分かってるさ。」

シン
「それで社長に直談判しに行くのか?」

タクミ
「んーん。色々調べられるみたい。」

シン
「そうか。」

守衛の男
「確認した。付いて来い。」

守衛の男
「入れるのはツキモリ・タクミ本人だけだ。」

シン
「カテえ事言うなよ。オレはこのコの義理の兄貴だぜ?」

守衛の男
「駄目だ。ここは部外者だろうが関係者だろうが、カンザキさんが会いたい人間しか入れない。」

シン
「ボディーガードぐらいさせてくれよ。」

守衛の男
「それもオレがやる。」

シン
「じゃあ、ここで待たせて貰うよ。アンタも退屈だろ?話し相手くらいにはなるぜ?」

守衛の男
「駄目だ。ケガする前にとっとと失せな。」

タクミ
「大丈夫だよ義兄さん。一人で行ってくる。」

シン
「なにかあったら連絡してくれ。」

シン
「どっかで隠れて待つか。弟の嫁のストーカーする羽目になるとはね。やっぱり地元はツイてねえ。」

結局分からずじまい。アタマがおかしくなりそうだ。昨晩見たタクミちゃんが本物だったって方がまだ納得出来るぜ。

やれやれ、タクミちゃんは犯人探しにノリノリだ。
いよいよオレのシッポにも火が付いて来たな。

シン
「?」

アイツからだ。進展があったのか?

【イノセントに来てくれ】

イノセント。あのジャンク屋、まだやってたのか…。
ガキの頃よくゴミ山のオタカラを売りに言ってたっけ。

とにかく状況を知りたい。COM社側はどうなってる?

タクミちゃんの事も心配だが、そっちも気になる。行ってみるか。

しかし珍しいな、アイツがメールなんて…。

昼下がりの。

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