
フゥ
「…。」
アイツはどこに行った…?
逃げたか、隠れたか?
…もしかしたらそんなに好戦的なヤツじゃ無かったのかも。
人間とトモダチになりたがってたひとりぼっちの可哀想な化け物だったのかも。
やっぱり人を見た目で判断するのは良くないかもね。
人じゃなくて化け物だけれど。
まあ、深く考えるのはよそう。
どこかに行ってしまったんならそれはそれで。
誰かを呼びに行ったんなら、それはそれで。

フゥ
「まだ前に進めるなら、それはそれで。」
にしてもこの部屋はなんだ?さっきまでと違って色々あるな。
見た事の無い機材。金持ちしか持ってないようなデカいモニター。座り心地の良さそうなイス。誰も居ないのに空調は効いてて。
ちょっと殺風景だけど、秩序立っていて、清潔だ。
フゥ
「うわあっ!?」

クソっ!やっぱり待ち伏せしていやがった!
待っていたんだ、アタシが油断するのをっ!
なんてヤツ!やはり敵っ!
不意打ち出来るほど知能があるとは?
あるいは捕食者としての本能か?
マズイっ、食われる!食われて終わる!!このアタシがっ、アタシの全てが!
フゥ
「ナメんなっ!」


フゥ
「あーっ!食うなっ!アタシの一張羅っ!」
次はアタシって事かよ…。アタシだって腹減ってるのに、こんな化け物に食われて終わりだなんて。あんまりじゃないか。
いや、待てよ?服を食うんなら、肉食じゃないんなら、まだアタシが食われると決まったワケじゃないぞ?
この部屋にコイツが食えそうなモンが無いかを探すほうが先か?

????
「…。」

フゥ
「?」


フゥ
「は?」






フゥ
「驚いた…。人間に化けちまった…。」


なんだ?すっげえ笑ってる…。めちゃくちゃおっかねえ…。
なんなんだコイツは、地下はこんなヤツばっかりなのか?アテが外れたなんてもんじゃないぞ。
どうする?なんか喋ってみるか?もしかしたら意思の疎通が出来るかも知れない。
いや待て、見た目に騙されるな。さっきまで化け物だったんだぞ?食われそうになったんだぞ?
でも…あるいは…。
フゥ
「ハ、ハロー。はじめまして。アタシはフゥ。アンタは?さ、さっきは急に殴ったりして悪かっ…!」


フゥ
「ぐっ!?」
痛ってえ…コ、コイツ…。
なんでここでドロップキックが出てくんだよ。やってくれる、まともに食らっちまった、
意味が全然わからん、最初から、最後まで、全部。
もう無理意識が…。
人を見かけで判断したツケ、いや、確か最初は化け物だったっけ。
フゥ
「腹減ったなぁ…。」


ガイダンス
「認証エラー!認証エラー!従業員ナンバー235415 タクミ・ツキモリは昨日午前11時46分に退室記録があります。」
ガイダンス
「恐れ入ります、最初からやり直して下さい。なお、後二回認証に失敗しますと、セキュリティセンターへの解除申請が…。」
????
「… ……。」

ガイダンス
「…システムエラーの可能性があります。ベイルアウトモードを使用して退室する場合は、表示されたAILCを23桁の数字に変換して入力して下さい。」
????
「…… …。」
ガイダンス
「認証完了。ドアロックを解除しました。」


離々。
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