ピロートーク。


「気がついた?」


「…何が?」


「あなた気を失ってたのよ?」


「アタマが痛え。」


「大丈夫?」


「大丈夫。」


「そう、良かった。」


「オレの体は今どうなってる?」


「落っこちてる。」


「どこまで落ちるんだ?」


「どこまでも。」


「浮かんでるみたいだ。」


「ある意味では。」


「体の感覚がほとんど無い。」


「無い方が良いわ。」


「真っ暗だし、何も見えねぇ。」


「見ないほうが良いわ。」


「キミには見えてるのか?」


「見えてるし、見られてるわ。」


「誰かがいるのか?」


「でっかいヤツ。」


「目が良いんだな。」


「あなたよりはね。」


「他には何が見える?」


「見えないわ。」


「あそこにいたみんなはどうなったんだろう?」


「みんなは大丈夫。」


「大丈夫?」


「何も無かった事になるわ。きっと。」


「きっと?」


「そのはずよ。」


「なぜわかる?」


「わたしがここに来たからよ。」


「じゃあ、落っこちたのはオレとキミだけか。」


「いいえ、落ちたのはあなただけよ。」


「わたしは自分の意志でここに来たのよ。」


「ウソだ。」


「ウソじゃないわ。」


「作り物に意志なんか、」


「訂正するわ。意志と言うよりは、愛ね。」


「それに、その作り物を助けようとして落ちてきたのは誰?」


「オレは仕事だったんだよ。」


「落ちるのが?」


「守るのがだよ。」


「あなたはちゃんと守ってくれたわ。」


「…どのみちキミには謝らなきゃならないな。」


「何を?」


「アレ、ぶっ壊したのオレなんだよ。」


「あなたがやったの?」


「厳密に言うと、壊れた原因がどうやらオレみたいなんだ。」


「言い方が変わっただけじゃない。」


「そうだな。恨むか?」


「ううん、」


「素敵ね。」


「オレが招いた結果だ。」


「あなたのせいじゃないわ。」


「…。」


「あんなもの壊した方が良かったのよ。」


「でも、そのせいで、キミが落ちる、ハメに…。」


「決まってた事なのよ。アレが壊されるのも、私が作られた事も。」


「私がここにいるのがその証拠。」


「…。」


「私を産み出した人は、一番最初に愛を教えてくれたわ。」


「あなただって私を助けようとしてくれたじゃない。」


「作り直しなんてさせない。」


「私が全部元通りにしてあげる。」


ピロートーク。

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