女
「気がついた?」
男
「…何が?」
女
「あなた気を失ってたのよ?」
男
「アタマが痛え。」
女
「大丈夫?」
男
「大丈夫。」
女
「そう、良かった。」
男
「オレの体は今どうなってる?」
女
「落っこちてる。」
男
「どこまで落ちるんだ?」
女
「どこまでも。」
男
「浮かんでるみたいだ。」
女
「ある意味では。」
男
「体の感覚がほとんど無い。」
女
「無い方が良いわ。」
男
「真っ暗だし、何も見えねぇ。」
女
「見ないほうが良いわ。」
男
「キミには見えてるのか?」
女
「見えてるし、見られてるわ。」
男
「誰かがいるのか?」
女
「でっかいヤツ。」
男
「目が良いんだな。」
女
「あなたよりはね。」
男
「他には何が見える?」
女
「見えないわ。」
男
「あそこにいたみんなはどうなったんだろう?」
女
「みんなは大丈夫。」
男
「大丈夫?」
女
「何も無かった事になるわ。きっと。」
男
「きっと?」
女
「そのはずよ。」
男
「なぜわかる?」
女
「わたしがここに来たからよ。」
男
「じゃあ、落っこちたのはオレとキミだけか。」
女
「いいえ、落ちたのはあなただけよ。」
女
「わたしは自分の意志でここに来たのよ。」
男
「ウソだ。」
女
「ウソじゃないわ。」
男
「作り物に意志なんか、」
女
「訂正するわ。意志と言うよりは、愛ね。」
女
「それに、その作り物を助けようとして落ちてきたのは誰?」
男
「オレは仕事だったんだよ。」
女
「落ちるのが?」
男
「守るのがだよ。」
女
「あなたはちゃんと守ってくれたわ。」
男
「…どのみちキミには謝らなきゃならないな。」
女
「何を?」
男
「アレ、ぶっ壊したのオレなんだよ。」
女
「あなたがやったの?」
男
「厳密に言うと、壊れた原因がどうやらオレみたいなんだ。」
女
「言い方が変わっただけじゃない。」
男
「そうだな。恨むか?」
女
「ううん、」
女
「素敵ね。」
男
「オレが招いた結果だ。」
女
「あなたのせいじゃないわ。」
男
「…。」
女
「あんなもの壊した方が良かったのよ。」
男
「でも、そのせいで、キミが落ちる、ハメに…。」
女
「決まってた事なのよ。アレが壊されるのも、私が作られた事も。」
女
「私がここにいるのがその証拠。」
男
「…。」
女
「私を産み出した人は、一番最初に愛を教えてくれたわ。」
女
「あなただって私を助けようとしてくれたじゃない。」
女
「作り直しなんてさせない。」
女
「私が全部元通りにしてあげる。」
ピロートーク。