25 天雷无妄

25 てんらいむもう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

休業中のガイコツ
「車を持ってきたよ。」

カエル
「納車おめでとう。」

休業中のガイコツ
「よろしく頼むね。」

カエル
「とりあえず倉庫に。」

茶番をトばす。

休業中のガイコツ
「わかった。」

カエル
「うん。ボロいね。」

休業中のガイコツ
「前の車よりはマシだよ。」

カエル
「そうだね。全然マシだ。」

休業中のガイコツ
「見て。タイヤだけが新しい。」

カエル
「ホントだ。タイヤだけ新しい。」

休業中のガイコツ
「ココの隅っこがちょっとヘコんでるの。」

カエル
「それくらいのヘコみ新車でもあるだろ。」

休業中のガイコツ
「あるわけねえだろ。」

休業中のガイコツ
「あ、あとこれ。ナンバーが良い子なの。」

カエル
「ああ。415ね。」

休業中のガイコツ
「うん。かわいいでしょ。」

カエル
「415ってことは无妄だ。」

休業中のガイコツ
「は?ムモウ?

カエル
「4は震で雷。1は乾で天だから、天雷无妄だ。无妄の五爻だ。无妄の五爻は噬嗑に往く。」

休業中のガイコツ
「易占い?どういう意味があんの?」

カエル
「自然現象なんて生き物のためでもなけりゃわざと生き物を滅ぼそうとしてるわけでもないんだから、感謝とか天罰とか言ってないでいいから受け入れろ。翻弄されろって意味だ。」

休業中のガイコツ
「なんか一生懸命生き抜いてきたのがバカバカしくなる話だな。オレは死んでるからいいけどさ。」

カエル
「それだけオレらはちっぽけな存在って事だよ。地球さんと一緒の気になってんじゃねえよ。」

休業中のガイコツ
「なんでキミが偉そうなんだよ。」

カエル
「まあ、占いの結果としては成り行きに任せてた方が良い事あるよって意味だ。良い卦だよ。流れに逆らうと良くないけど。」

休業中のガイコツ
「成り行き任せって占いの結果としてどうなの?結局先の事は分かんないんじゃん。ちょっとあきらめ気味だし。」

カエル
「それだけ何が起こるかわからんトコで生活してるって事。」

カエル
「地球空洞説じゃないけど、オレだって地球の内側に住めるんなら住みたいもの。」

カエル
「そもそも家から出たくないんだから。」

休業中のガイコツ
「このヒキコモリガエルが。」

カエル
「こんな卵の殻の一番外側でさ、危なくないわけ無いだろ。」

休業中のガイコツ
「たまには外に出なよ。このトラックでドライブ連れてってやろうか?」

カエル
「行かねえ。」

休業中のガイコツ
「これですよ。」

休業中のガイコツ
「まあいいか。成り行き任せはオレも臨むトコロだ。気に入ったよ。」

休業中のガイコツ
「この車ははサンダー号って名前にしよう。」

カエル
「ダッサ。」

休業中のガイコツ
「いいの。そういう名前のスロットがあるんだ。」

カエル
「知ってるよ。リプレイ外しが難しいヤツだろ?」

休業中のガイコツ
「どうやるんだっけ?」

カエル
「三連Vの下のベルを上段にビタ押し。」

休業中のガイコツ
「久しぶりに打ちたい。」

カエル
「ね。」

休業中のガイコツ
「どれくらいで出来る?」

カエル
「何が?」

休業中のガイコツ
「ホロ。」

カエル
「明日の夕方まで待って。」

休業中のガイコツ
「楽しみだ。」

カエル
「既製品みたいなヤツは期待すんなよ。」

休業中のガイコツ
「雨風しのげれば文句言わないよ。」

カエル
「それは任せて。」

休業中のガイコツ
「じゃあ帰るけど自転車まだ借りてていい?」

カエル
「いいよ。」

休業中のガイコツ
「ありがと。じゃあ明日の夕方に。」

カエル
「またね。」



天雷无妄
てんらいむもう


天は健やかに、雷は勢いよく轟く。

自然現象にだけは生物は完全に受け身。
お日様も雨降りも季節の巡りも、台風も雷も地震も。津波も。
理解して予見したり利用することは出来てもそのエネルギーの全てをコントロールする事は出来ない。

本当はどっかの誰かがコントロールしてくれてるのかも知らんけど、こちら側があまりにもちっぽけな存在過ぎて、直面した現象に一喜一憂右往左往。
そう考えると人間社会にも通じるところがある。

易占いの起源というか真理というか、事の発端みたいな卦。好き。

欲望も作為も無い自然なままの働きの事を「无妄」というらしい。

オレの欲望も作為も無い自然な働きも、誰かに影響を与えてるんだろうか。例えば飼い猫とかに。
逆に毎日二回エサが補充されて、たまに水が空っぽになってるのも欲望も作為も無い自然な働きだと思ってんだろうか。

そんな事考えてたら夜しか寝れなくなっちゃうね。

この世に客に来たと思えば何の苦もなしだ。


卦辞

无妄。元いに亨る。貞に利ろし。
其の正に匪ざれば眚い有り。

往く攸有るに利ろしからず。

むもう。おおいにとおる。ていによろし。
そのせいにあらざればわざわいあり。
ゆくところあるによろしからず。

正しい道を守っていれば何事も上手く行く。
しかし不正の道なら災い有り。
積極的に行動してはいけない。

正・不正は善悪の事ではなくて、通れる道を探して進めって事。
道が無いなら無理して進むなよって事。


爻辞

何が起きても、何も起きなくても、いつも通りに、ありのままに。


初爻

无妄にして往けば吉。

むもうにしてゆけばきち。

成り行きに任せれば吉。

流れに逆らわない。
小細工は無用。


二爻

穫るに耕さず。
菑に畬せず。
則ち往く攸有るに利ろし。

かるにたがやさず。
こなたつくるにあらきばりせず。
すなわちゆくところあるによろし。

収穫するために耕すのではなく、利益のために開墾するのでもない。その心構えなら積極的に行動しても良い。

目の前のやるべき事をやる。


三爻

无妄の災い。
或いは牛を繋ぐ。
行人の得るは、邑人の災い。

むもうのわざわい。
あるいはうしをつなぐ。
こうじんのうるは、ゆうじんのわざわい。

予期せぬ災い。村で繋いでいた牛が盗まれる。犯人はたまたま村を通った通行人。でも飼い主はたまたま近くにいた村人を疑ってしまう。

村人とばっちり。なんて日だ。


四爻

貞にすべし。咎无し。

ていにすべし。とがなし。

正しい道を固く守る。咎なし。

道の真ん中をまっすぐ歩く。


五爻

无妄の疾。薬なくして喜び有り。

むもうのやまい。くすりなくしてよろこびあり。

思いがけない病。でも薬を飲まなくても治っちゃう。

悪運。
なんかわからんけど良し。


上爻

无妄行けば眚い有り。
利ろしき攸无し。

むもうゆけばわざわいあり。
よろしきところなし。

无妄の果て。これ以上行けば災い有り。
いいトコ無し。

運の尽き。今まで通っていた事が通らない。


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