23 山地剝

23 さんちはく


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

休業中のガイコツ
「バッタ買って来たよ。」

カエル
「ごちそうさま。勝ったの?」

休業中のガイコツ
「勝ったよ。久しぶりに。」

茶番をトばす。

休業中のガイコツ
「でも一日打って一万勝ちだ。」

カエル
「日当としては悪くないじゃん。」

休業中のガイコツ
「悪くない。」

休業中のガイコツ
「オレはもう堅い台しか打たん。」

カエル
「その意気だ。」

休業中のガイコツ
「こんなにマジメに立ち回ったのいつ以来だろう。」

休業中のガイコツ
「前日の夜に下調べして、朝から並んで良さそうな台取って、閉店までぶん回しか。」

休業中のガイコツ
「普通に働いてた方がマシだぜ。」

カエル
「若い頃は平気で出来たんだよな、それを。いとも容易く。」

休業中のガイコツ
「環境も良かったんだよ、業界全体のさ。活気があった。」

休業中のガイコツ
「店も客も台作ってるメーカーも、なんかみんな楽しそうだったよな。」

カエル
「あの頃のスロットが打てるんならオレも重い腰を上げるんだけどな。」

休業中のガイコツ
「もうそんな時代は来ねえよ。」

カエル
「来ないか。使う金も無いしな。」

休業中のガイコツ
「そういえばさ。」

カエル
「ん?」

休業中のガイコツ
「どうぶつの森、どう?」

カエル
「やってるよ。たまーに。思い出したように。」

休業中のガイコツ
「オレも昨日久しぶりにやったよ。」

カエル
「やっぱおんなじ家具とか服でもカラーバリエーションが多いと違うな。」

休業中のガイコツ
「オレはピンボール台揃えて並べた。」

カエル
「カッコいいっすね。」

休業中のガイコツ
「あとリアクションで地べたに座れるようになってた。」

カエル
「アレかわいいよね。」

休業中のガイコツ
「ね。」

カエル
「でも自分地べたに座らせるんならペットのほう椅子置いた場所にもっと座るようにして欲しかった。」

休業中のガイコツ
「ペットじゃねえ。住民な。」

カエル
「あと収納広く出来るようになってたな。」

休業中のガイコツ
「全然足りなかったもんね。」

カエル
「あとは島クリエイトと区画整理まとめて出来るモードがあればなー。」

休業中のガイコツ
「それぞれは楽しいんだけどなんか足の引っ張り合いというかさ、噛み合ってない感じがするよ。」

カエル
「アレでは時間操作してくれって言ってるようなもんだもの。」

休業中のガイコツ
「時間進めた?」

カエル
「意地でも進めねえ。」

休業中のガイコツ
「進めれば楽なのに。」

カエル
「なんかさ、すげえ良いトコも増えたけど、その分本来の良さも無くなったよね。」

休業中のガイコツ
「アレでしょ?すれ違い通信の事でしょ?」

カエル
「それも無くなって寂しかったけど、雰囲気とかようやくたどり着いた自分だけの居場所感だよ。」

休業中のガイコツ
「あー。」

カエル
「なんか侘び寂びというかさ、しみったれた感じが無くなったよね。」

休業中のガイコツ
「わかる。今回家の増築しないと収納が増えない仕様だから、前作みたいに家なんかちっちゃくてもいいや。みたいなゲームの中での更なるごっこ遊びは確かに出来なくなったな。」

カエル
「実際に不便な生活がしたいわけじゃないからさ、DIYも家具だけでいいだろ、別に。道具も壊れるからその都度作れとかめんどくせえよ。」

カエル
「それぞれの価値観をいくらでも掘り下げていけるのがどうぶつの森というものだと思っていたのに。」

休業中のガイコツ
「今回みんなで見せ合うの前提だからしょうがないよ。オレ達のオッサン島は。」

カエル
「でも最後までここが自分の島だって気持ちにはならなかったよ。」

休業中のガイコツ
「最後て。もうやめたの?

カエル
「いや、やるんだけどさ。ファンだし。まだまだ面白くなるかもしれないですからね。」

休業中のガイコツ
「しかしながらそうやって段々、段々と居心地の良い場所が無くなっていってしまうのを、人は老いと言うのかもしれないですね。」

カエル
「そうですね。もしかすると変わってしまったのは我々の方かも知れないですね。」

休業中のガイコツ
「では、今日はこれで帰りますね。」

カエル
「はい。」

休業中のガイコツ
「じゃあね。」

カエル
「またね。」



山地剝
さんちはく


山が雨風に晒され削られて平地に戻る卦。

十二消長卦の一つ。
旧暦で九月。新暦で十月を表す。
下から陰の気が迫ってきて、陽の気を追い込んでいく。

剥ぐ、剥がされる。

善良な王様が悪意ある小人に追い詰められる。

卦のイメージはそんな感じで最悪。この卦を坎爲水の代わりに四難卦に置く流派もあるみたい。

自分の居心地の良い場所が奪われる。
下だと思ってた相手に足元をすくわれる。
人のせいにもしたくなる。

ちなみに一陽五陰の卦。異性にモテる。


卦辞

剝。往く攸有るに利ろしからず。

はく。ゆくところあるによろしからず。

進んで行動してはいけない。

進んで行動してはいけない。危機的状況に直面した時の対策。積極的な行動をとにかく控える。

気配を消して身を潜めて、人に従って収束を待つ。

ちょっとズルいか。でもしょうがない。こんな時もある。

責任感の強い人には許せない状況になるか。


爻辞

忍び寄る危険。
初爻、二爻、四爻は吉凶というかもはやホラー。


初爻

牀を剝すに足を以てす。
貞を蔑す。凶。

しょうをはくすにあしをもってす。
ていをほろぼす。きょう。

牀(ベッド)の足を壊しに来る。
自分の立場を脅かす。凶。

ベッドの足を壊しに来る。くる。

トラブルの種。寝てる場合じゃない。

足元注意の油断大敵。


二爻

牀を剝すに辨を以てす。
貞を蔑す。凶。

しょうをはくすにべんをもってす。
ていをほろぼす。きょう。

牀(ベッド)の足の付け根を壊しに来る。
大事な立場を失う。凶。

段々近づいてくる。

トラブルの芽。

油断大敵。


三爻

之を剝す。咎无し。

これをはくす。とがなし。

悪い仲間と手を切る。非難はされない。

道を踏み外さない。

甘い誘惑に注意。

孤立を恐れるな。


四爻

牀を剝すに膚を以てす。凶。

しょうをはくすにはだえをもってす。
きょう。

もう肌に触れる距離まで近づいて来る。凶。

チェックメイト。トラブル通り越してスクランブル。ヤダこの卦。

対策をしなかったことを後悔。

身近な存在に注意。

身を引く準備を。


五爻

魚を貫く。
宮人の寵を以てす
利ろしからざる无し。

うおをつらぬく。
きゅうじんのちょうをもってす。
よろしからざるなし。

まるで目刺しのようにリーダーが他の宮仕え達を取りまとめて王様の寵愛を受けようとする。
良くないわけがない。

中間管理職の王。
一人で気に入られようとせず、みんなで王様に悪態をつくわけでもなく、みんなで王様に気に入られる。

剥がされないし、剥がさない。

リーダーシップを発揮。上下関係は良好。

板挟みには注意。

バランス。


上爻

碩果食われず。君子は輿を得。
小人は廬を剝す。

せっかくらわれず。くんしはよをう。
しょうじんはろをはくす。

果実が一つ、食べられずに残っている。
それは最後の希望。君子の正しい心。
その君子は車に乗せられ人々を導く新たな王に。
その最後の希望すら剝ぎ取ろうとする小人は、自分の住む処を失う。

親の金盗んだって、税金誤魔化したって最終的に割を食うのは自分。

結局胴元に利益がなきゃ客にも還元されないからね。

そう考えるとたまには負けても良いかななんて思うわけねえだろ。


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