21 火雷噬嗑

21 からいぜいごう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

休業中のガイコツ
「全く何だってんだよ。」

茶番をトばす

休業中のガイコツ
「なんでオレがタバコの吸い殻入れの代わりにされてそのまま放置された空き缶みたいに惨めな思いしなきゃいけないんだよ。」

カエル
「なんだよ急に。」

休業中のガイコツ
「やってられないぜホントに。ホントにやってられないぜ。」

カエル
「機嫌悪いんなら帰れよ。」

休業中のガイコツ
「聞いてくれよ。」

カエル
「なんだよ。聞きたくねえよ。」

休業中のガイコツ
「さっき駅でさあ、キミのカサを買った客がさ、カサの柄が曲がってるとか言いがかりつけてきたんだよ。」

カエル
「なんだと?」

休業中のガイコツ
「カサ開いたらそのあといくら閉めようと思っても閉まらないんだって。」

カエル
「じゃあ使ってる間に曲がったんじゃないのか?」

休業中のガイコツ
「いやオレが運んでる時に曲げた。」

休業中のガイコツ
「だから言ってやったんだよ。オレの友人のカサ職人が汗水垂らして一生懸命リメイクしたカサに不良品なんかあるわけ無いだろ。つって。」

休業中のガイコツ
「気に入らないんだったら金返すからそのカサ置いてとっとと帰れよ。つって。」

休業中のガイコツ
「残念だけど友人を侮辱するようなヤツに売れるカサはここには置いてねえ。家に帰ってママのおっぱいでも飲んでろよ。」

休業中のガイコツ
「って言おうとしたんだけどあんなヤツでも一応客だし。屈辱に耐えながらも返品に応じたよ。」

休業中のガイコツ
「厄日だぜ。」

カエル
「厄日だぜ。じゃねえよ。オマエが曲げたんじゃねえかよ。」

休業中のガイコツ
「そうだよ。だからそう言ってんじゃん。」

カエル
「どうせパチ屋に早く行きたくて道悪いトコ近道したんだろ。」

休業中のガイコツ
「うん。ロクな道じゃねえよ。ホントに。」

カエル
「確かにやる事ないならスロットだけでもマジメにやったらって言ったのはオレのほうだけど仕事は仕事としてちゃんとやれよ。」

カエル
「で、そのカサどこにあんのよ?」

休業中のガイコツ
「持って帰ってきたよ。全部。」

カエル
「全部曲がってんの?」

休業中のガイコツ
「当たり前だろ。おんなじリヤカーに積んでんだから。」

カエル
「なんでさっきからオマエのほうが先に怒ってんだよ。」

カエル
「追い越すな。オレだ、怒りてえのは。そしてオマエだ、家に帰ってママのおっぱい飲まなきゃならんのは。」

休業中のガイコツ
「坊主。世の中にはこういう強引な方法も時に必要な場合があるんだぜ。やさしいだけじゃダメだぜ。」

カエル
「通るかそんなもん。いいから早く持って来いよ。治すから。」

休業中のガイコツ
「はい。」

カエル
「治したらまた売って来いよ、君の取り分もあるんだから。今日パチンコ屋なんか行ってられないからな。」

休業中のガイコツ
「オーライ。」

カエル
「何がオーライだ。」

休業中のガイコツ
「バッタあるけど食べる?」

カエル
「食べる。」

休業中のガイコツ
「コーヒーは?」

カエル
「飲む。コーヒーはオレのだろ。」

休業中のガイコツ
「手伝うよ。」

カエル
「いいよ。治ったヤツから積んでってよ。」

休業中のガイコツ
「はーい。」

カエル
「今度は曲げるなよ。」

休業中のガイコツ
「わかってるよ。」

カエル
「ちょっと待って。」

休業中のガイコツ
「ん?」

カエル
「コレを内側に敷き詰めてクッション代わりにしよう。」

休業中のガイコツ
「それ材料に使うんじゃないの?」

カエル
「端材だからいいよ。」

カエル
「これなら道悪くてもカサ痛まないだろ。」

休業中のガイコツ
「なるほど。」

カエル
「なるほどじゃねえよ。運び屋ならもっと積み荷に気使えよ。」

カエル
「パチンコ屋行くつもりだったらパチンコ屋の前で捌いてなよ。今度から。」

休業中のガイコツ
「ごめんね。行って来るわ。」

カエル
「またね。」



火雷噬嗑
からいぜいごう


口の中の異物を取り除く卦。
噛み砕く、嚙合わせるという意味。

最後まで諦めるなの卦。
トラブルに見舞われる。
でもそれは必ず解決出来るトラブルなので、
一歩一歩。というか一噛み一噛み根気強く取り除いて行こう。

子供のころ学校で牛乳を噛んでから飲まされてたけど今思えばアレ何だったんだろう。アゴ鍛えてたのかな?


卦辞

噬嗑。亨る。獄を用いるに利ろし。

ぜいごう。とおる。ごくをもちいるによろし。

世に蔓延る悪人を取り除くには、刑罰を用いる他ない。

悪人か善人かどうかは別にして、障害は強行手段で取り除く必要がある。


爻辞

裁く側と裁かれる側のやり取りを、なぜか肉に例える斬新な手法。
別にいいけどなんでそんな事したんだ。


初爻

校を履きて趾を滅す。咎无し。

こうをはきてあしをめっす。とがなし。

足枷をつけて動けなくする。
罪人も反省しているので咎なし。

軽犯罪には相応の罰を。
失敗は誰にでもある。
自由が利かなくなる。
足元に注意。


二爻

膚を噬みて鼻を滅す。咎无し。

はだえをかみてはなをめっす。とがなし。

肉を噛んだらもの凄く柔らかい肉で、鼻まで肉に埋まった。咎なし。

裁く側が優秀過ぎて、罪人が簡単に白状した。という意味。

トラブル解決。
肉食いてえ。


三爻

腊肉を噬みて毒に遇う。
小しく吝なれども咎无し。

せきにくをかみてどくにあう。
すこしくりんなれどもとがなし。

干し肉を噛んだら毒にあたった。恥ずかしい事だが咎なし。

裁く側が力不足で罪人におちょくられる。
頑張って仕事しているので咎められない。

人の仕事を笑うな。
こんなの失敗の内に入らない。
肉食いてえ。


四爻

乾胏を噬み金矢を得。
艱貞に利ろし。吉。

かんしをかみ きんしをう。
かんていによろし。きち。

干した骨付き肉を噛んだら中から矢が出てきた。
諦めずに努力したので吉。

相当な罪人を苦労の末白状させる。
そしてその功績をひけらかさない。吉。

苦労が報われる。
あまり調子に乗らない方がよろし。
肉食いてえ。


五爻

乾肉を噬みて黄金を得。
貞しけれども厲うし。咎无し。

かんにくをかみておうごんをう。
ただしけれどもあやうし。とがなし。

柔らかい干し肉を噛んだら中から黄金が出てきた。正しいが、危うい。咎なし。

君主自ら罪人を裁く。その行いは正しいが、
君主自らが悪人を裁かなければならないこのご時世が危うい。咎めは受けないけど。

不幸中の幸い。
悪運有り。
肉食いてえ。


上爻

校を何いて耳を滅す。凶。

こうをにないてみみをめっす。きょう。

耳が隠れるほどの首枷をはめられる。凶。

大悪党。もう誰の声も届かない。

上手く行かない。
人の意見に耳を傾けよう。
肉食ってる場合じゃない。


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