18 さんぷうこ
かえるのうた
カエル
「いらっしゃい。」
休業中のガイコツ
「おつかれさん。」
休業中のガイコツ
「バッタ買ってきた。」
カエル
「ありがとう。パチ屋行ってきたの？」
休業中のガイコツ
「うん。ヒマなんだもん。」
カエル
「まあ仕事してりゃ何しててもいいけどさ。」
カエル
「で、勝ったの？」
休業中のガイコツ
「いや、負けた。」
カエル
「そか。
休業中のガイコツ
「ダメだね、一回離れると。どうやって勝ってたか忘れちったよ。」
カエル
「歌を忘れたカナリアだな。」
休業中のガイコツ
「は？翼の折れたエンジェルですけど。」
カエル
「キバを抜かれたケモノだろ？」
休業中のガイコツ
「炭酸の抜けたコーラかも。」
カエル
「もうそんなに熱も無いんでしょ？」
休業中のガイコツ
「まあね。」
カエル
「ヤメりゃいいのに。」
休業中のガイコツ
「なんか定期的にレバーを叩きたくなっちゃう。」
カエル
「ビョーキじゃん、もう。」
休業中のガイコツ
「本当の自分ってやつさ。」
カエル
「なるほど。」
カエル
「車は見つかりそう？」
休業中のガイコツ
「まだちょっとかかる。金も、時間も。」
カエル
「そか、１００万で２トントラックは難しいか、やっぱり。」
休業中のガイコツ
「色々と上手く行かねえ。」
カエル
「今まで忙しかったからそう感じるだけだよ。」
休業中のガイコツ
「そうかなー。」
カエル
「焦んなって。コーラでも飲む？」
休業中のガイコツ
「ありがとう。」
カエル
「そんなに不安なら占ってみたら？」
休業中のガイコツ
「別に不安じゃないけど。何を？」
カエル
「現在の状況と、将来に向けての傾向と対策。」
休業中のガイコツ
「現在の状況と、将来に向けての傾向と対策。」
カエル
「ん。」
休業中のガイコツ
「出た。」
カエル
「見して。」
カエル
「山風蠱だ。
蠱。元いに亨る。大川を渉るに利ろし。
甲に先立つこと三日。甲に後るること三日。」
カエル
「変爻は上爻。蠱は升に往く。」
休業中のガイコツ
「ムシのヤツ？」
カエル
「そう。」
休業中のガイコツ
「やっぱりあんまり良くないか。」
カエル
「そう思っててそういう卦が出てくるんなら、きっとそういう現状なんだろうよ。」
休業中のガイコツ
「どういう意味だっけ？」
カエル
「腐る。乱れる。滞る。爛れる。」
休業中のガイコツ
「当たってるわ。」
カエル
「なんか悩みがあるなら早めに解決した方がいいってよ。」
休業中のガイコツ
「悩みなんか無いよ。まっすぐ腐ってんだから。」
休業中のガイコツ
「仕事休んで、パチンコ屋通いしかする事がなきゃ腐りたくもなる。」
休業中のガイコツ
「車が見つかればまた仕事が始まる。今だけさ、前もそうだったろ？」
カエル
「パチンコ屋通いしてるだけなら腐ってるとは言わないよ。」
カエル
「スロットやりたいならスロットだけでも真面目に向き合ったら？」
カエル
「何が歌を忘れたカナリアだよ。」
休業中のガイコツ
「それはキミが言ったんだが。」
休業中のガイコツ
「でも今の台は色々ややこしくて本読んでも訳分かんねえんだもん。」
カエル
「分かるヤツやればいいでしょうよ。」
休業中のガイコツ
「ノーマルＡタイプとかか？」
カエル
「うん。」
休業中のガイコツ
「金使うんなら演出楽しめるほうがいいもん。」
カエル
「どうせ複雑な台なんて、考えるのメンドくさがらせて金使わせるか、アタマ使って打ってます感だけ感じさせて結局プレミアの引きで片付けるかのどっちかだろ。」
休業中のガイコツ
「そんな事ないよ。薄っすらメーカーを批判するんじゃない。」
カエル
「どうせ打つならシンプルなヤツにしなって。」
休業中のガイコツ
「でもＡタイプのコーナーって上手い人しかいないから結局良い台取れなくて負けちゃうんだよね。」
カエル
「上手い人がＡタイプしか打たなくなったんならつまりそういう事なんだろ。」
休業中のガイコツ
「世知辛いねえ。」
カエル
「夢がないよね。」
休業中のガイコツ
「Ａタイプ打つかー。」
カエル
「そんなにイヤなの？」
休業中のガイコツ
「いや、どうせ金使うんならって事。」
カエル
「例えばさ。」
休業中のガイコツ
「うん。」
カエル
「この世界が巨大なスロット台だと思えばいいんじゃない？」
休業中のガイコツ
「アタマ大丈夫か？」
カエル
「キミの一日の行動全てがスロットの演出だと思えばいいじゃん。」
休業中のガイコツ
「俯瞰で見るって事？占いやってるキミらしい例えだな。」
カエル
「でも腐ってないってそういう事よ？」
休業中のガイコツ
「オレもＡタイプのシマに足を踏み入れて上級者とシノギを削れって事？」
カエル
「だって今仕事休んでスロットばっかしてんだろ？」
休業中のガイコツ
「うん。」
カエル
「山風蠱の上爻は地風升に往くんだ。植えた木の種がドンドン成長して大木になるって卦だ。」
休業中のガイコツ
「Ａタイプのシマで勝てるようになる？」
カエル
「スロットだけじゃない。何に対してもどんな環境でも可能性は追わないと。精神の成長だ。」
休業中のガイコツ
「感動した。キミの言うとおりだ。」
カエル
「スロットと言えば、今度パチンコ屋さんにも傘置いてもらえるようになった。」
休業中のガイコツ
「景品で？」
カエル「景品と、従業員用で。」
休業中のガイコツ
「へー、良かったじゃん。」
カエル
「今作ってるからそのうち配達頼むね。」
休業中のガイコツ
「いいけど、どこのパチ屋？」
カエル
「駅前の、酒屋の向かいの。」
休業中のガイコツ
「あー、家から近すぎて逆に行かない店だわ。」
カエル
「わかる。近所ってだけでなんか身内感が出ちゃうんだよね。」
休業中のガイコツ
「そうなんだよ、勝っても素直に喜べないし、負けたら負けたで胸が苦しくなる。」
カエル
「見ねえ顔のヤツが出してるのを見ちゃうとね。」
休業中のガイコツ
「何でオレを勝たせないんだよって気持ちになる。」
カエル
「お店的には誰が勝っても負けてもどっちでもいいんだけどね。」
休業中のガイコツ
「だから近場ではあんまり打ちたくないの。お店の事をキライになりたくないの。」
カエル
「そんなこと言わずに使ってあげてよ。」
休業中のガイコツ
「良い台が落ちてたらな。」
休業中のガイコツ
「そろそろ帰るわ。」
カエル
「今日はもう行かないの？」
休業中のガイコツ
「行かねえ。」
休業中のガイコツ
「ごちそうさま。また来るわ。」
カエル
「またね。」
山風蠱
さんぷうこ
風が山で止められるの卦。
空気がよどんでジメジメしてるから、腐ってムシが湧く。
やる気もないクセにダラダラ続けてるから、腐ってムシが湧く。
腐敗し乱れたものはフタしただけじゃダメで、それを正して取り除く。つまり山ごと吹き飛ばす風。
卦辞
蠱。元いに亨る。
大川を渉るに利ろし。
甲に先立つこと三日。
甲に後るること三日。
こ。おおいにとおる。
たいせんをわたるによろし。
こうにさきだつことさんじつ。
こうにおくるることさんじつ。
腐敗し、乱れたものを正すには、大きな川を渡る信念と、三日前に準備を整え、実行した三日後にはもう片付け終わってるくらいのスピードが必要。
新しい事を始めるきっかけ。
トラブルを抱えてるなら先延ばしにしないで最優先で処理。
前任者の尻ぬぐい。
過去に放っておいた物事に足を引っ張られる。
爻辞
権力を維持し続けるといずれは腐敗する。
そんなやらかした親に満を持して子供が立ち上がる。
初爻
父の蠱を幹す。子有れば考咎无し。
厲うけれども終に吉。
ちちのこをかんす。こあればちちとがなし。
あやうけれどもついにきち。
父親の尻ぬぐい。
自分はまだ子供で小さく弱いのでなかなか上手く行かないが、最後には吉。
前任者の後始末。
たまったもんじゃないけど自分しか出来ないならやるしかない。
二爻
母の蠱を幹す。貞にすべからず。
ははのこをかんす。ていにすべからず。
母親の尻ぬぐい。
悪い母親と言えども女性なのであんまり強引な手段は取らない。
やんわりと、話し合いやご機嫌取りくらいでちょうどいい。
古代中国にあるまじきフェミニズム。いい息子さん。
三爻
父の蠱を幹す。
小しく悔有るも、大なる咎无し。
ちちのこをかんす。
すこしくくいあるも、だいなるとがなし。
父親の尻ぬぐいpart２。
徹底的にやり過ぎて余計なトラブルを生む。
しかしやる気は伝わったのでお咎めなし。
ゴミ捨てようとしたら間違ってごみ箱ごと捨てちゃったよ。みたいな。
勢いは良いが、そのせいで面倒な事になりそう。
四爻
父の蠱を裕にす。往けば吝を見る。
ちちのこをゆたかにす。ゆけばりんをみる。
父親の悪事を一緒になって増やす。
結構恥。
親父高笑い。
不本意な結果になりそう。
自分一人では手に負えない問題の可能性があるので、人に相談してみるのも手。
五爻
父の蠱を幹す。用って誉れ有り。
ちちのこをかんす。もってほまれあり。
父親の尻ぬぐいpart３。
大成功。誉れ有り。
完膚なきまでに親父をコカす。オレが上。お前が下だぜ、親父。
乱れていたものを正す時。
トラブルは無事解決出来る。
上爻
王候に事えず。
其の事を高尚にす。
おうこうにつかえず。
そのことをこうしょうにす。
これからは誰にも仕えない。
自分のやりたい事を最優先に考える。
蠱の極。
自分を脅かすトラブルやしがらみはもう消えた。
転機が訪れる。
転職、引退、独立、移住、放浪。好きにしてよろし。
アンチェイン。（繋がれざる者）