13 天火同人

13 てんかどうじん


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

運び屋のガイコツ
「おつかれー。」

茶番をトばす。

カエル
「指輪ちゃんと返してきたの?」

運び屋のガイコツ
「うん。持ち主見つかるまで預かっておくってさ。」

カエル
「そか。」

カエル
「そういえばさ。」

運び屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「昨日キミに会いたがってた人が来たよ。」

運び屋のガイコツ
「オンナ?」

カエル
「いや、カッコいい兄ちゃんだったよ。なんか仕事頼みたいんだってさ。」

運び屋のガイコツ
「あ、ホントに?オレも顔が広くなったな。」

カエル
「ここに住んでると思われてたみたいよ。」

運び屋のガイコツ
「大体いるからね。」

カエル
「連絡先置いてったよ。いつでもいいから連絡くれって。」

運び屋のガイコツ
「ありがと。いつでもいいのかよ。」

運び屋のガイコツ
「仕事の依頼か?本当に?」

カエル
「そう言ってたけど。」

運び屋のガイコツ
「ちょっと占ってみる。」

カエル
「電話してみりゃいいじゃん。」

運び屋のガイコツ
「いや、念のため。」

カエル
「心あたりがあるのか?」

運び屋のガイコツ
「無いからだよ。」

カエル
「ふーん。」

運び屋のガイコツ
「カッコいい兄ちゃんの仕事の依頼。」

カエル
「うん。」

運び屋のガイコツ
「出た。」

カエル
「見せて。」

カエル
「これは天火同人。変爻は初爻と二爻。」

カエル
「同人野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。」

運び屋のガイコツ
「どういう意味?」

カエル
「仕事の依頼じゃないのかも。」

運び屋のガイコツ
「ほら。」

カエル
「同業者?」

運び屋のガイコツ
「えー、オレ何にも悪い事してないよ。」

カエル
「いや、この卦は人と同じくするって意味でさ、人付き合いに関してなら全然悪くないと思うよ。」

運び屋のガイコツ
「ならいいや。」

カエル
「キミはもっと人脈広げたほうがいいってさ。」

運び屋のガイコツ
「そっくりそのままお返しするよ。」

カエル
「オレはいいよ。充分。」

運び屋のガイコツ
「もー。」

カエル
「之卦はね、天風姤。」

運び屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「姤は遇なりだ。思いがけない出会いがあるかも。」

運び屋のガイコツ
「オンナ?」

カエル
「そうとも限らない。人ですらないかも。」

運び屋のガイコツ
「そうか。覚えとく。」

運び屋のガイコツ
「ありがとうね、また来るわ。」

カエル
「早めに連絡しなよ。オレが伝えなかったみたいになっちゃうからよ。」

運び屋のガイコツ
「うん。」

カエル
「またね。」



天火同人
てんかどうじん


天は上に上に昇り、火も上に上に燃え上がる同じ性質である事から、人と同じくする、みんなで一つの目標に向かうという意味の卦。

同人誌の同人。こんな昔の言葉だったんだ。


卦辞

同人野に于てす。亨る。
大川を渉るに利ろし。

君子の貞に利ろし。

どうじん やにおいてす。とおる。
たいせんをわたるによろし。
くんしのていによろし。

人と力を合わせて何かをする時は陰でコソコソしてはいけない。
例えば広い野原に人と集まるように公明正大に。
そのような志なら大河を渡るような大事を行ってもよい。

ただ人を集めただけじゃダメで、その志も同じくしなきゃならない。

仕事でも趣味でも恋愛でも人と直接関わることは吉。


爻辞

目標は仲間を沢山集めて大業を為すこと。

やっと家から出る気になった初爻。
五爻との合流を果たそうとする二爻。
それをジャマする三爻と四爻。
最強の五爻。
完全なる部外者の上爻。

同人とは・・・


初爻

同人門に于てす。咎无し。

どうじん もんにおいてす。とがなし。

人と協力するにはまず門を出なければならない。咎められない。

家の中であれこれ考えるよりは、とりあえず家から出てみる。


二爻

同人宗に于てす。吝。

どうじん そうにおいてす。りん。

人と協力する時は身内や知り合いとだけで固まっていてはダメ。恥をかく事に。

公平に。色んな人と交わって。苦手。


三爻

戎を莽に伏せ、其の高陵に升る。
三歳不興らず。

つわものをくさむらにふせ、そのこうりょうにのぼる。
さんさいおこらず。

兵を草むらに隠れさせ、高い丘の上で相手(五爻)の様子をうかがう。
しかし相手が強すぎてスキを見せないので、長い間攻め入る事が出来ない。

取り組んでいる事がちょっと分が悪い。だまされる事があるかもしれない。

五爻つええ。


四爻

其の墉に乗るも、攻むる克わず。吉。

そのかきにのるも、せむるあたわず。きち。

城壁に登って様子を伺うが、相手(五爻)が強すぎるので攻め込むのをあきらめる。冷静に対応したので吉。

人間あきらめが肝心。な時もある。

五爻がつええ。


五爻

同人、先には号咷し後には笑う。
大師克ちて相遇う。

どうじん、さきにはごうとうしのちにはわらう。
たいしかちてあいあう。

最初は泣き叫び、最後には笑う。
それは敵に攻め込まれるが、大軍を率いて敵に打ち勝ち、遇いたい人(二爻)に遇う事が出来たから。

勝負どころ。
最後まで何が起こるか分からない。
あきらめないで。


上爻

同人郊に于てす。悔无し。

どうじん こうにおいてす。くいなし。

誰もいない郊外。積極的に人とは交わらないが、余計なしがらみもない。悔いる事なし。

さびしいけどね。様子見。

一歩引いて、遠くから広い視野で。


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