12 天地否

12 てんちひ


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

運び屋のガイコツ
「届けてきたよ。」

カエル
「ありがとう。」

カエル
「どうだった?」

茶番をトばす。

運び屋のガイコツ
「なんかすげえ威張ってんね、あの人。」

カエル
「でしょ?苦手なんだよ、あの人。多分みんな苦手だと思うよ。」

運び屋のガイコツ
「まあ社長さんだもの。そんなもんじゃないの?」

カエル
「やさしい社長さんだっていっぱいいるよ。」

運び屋のガイコツ
「でも人の上に立って会社や社員守らなきゃならない責任があるからな。」

運び屋のガイコツ
「気が立って人にきつく当たる時だってあるんじゃないか?」

カエル
「いいや違うね、アレはオレらみたいなうだつの上がらないモンを見下す態度だね。」

運び屋のガイコツ
「うだつが上がってない自覚はあんのね。」

カエル
「あるよ、そりゃ。」

運び屋のガイコツ
「ヒマならもっと他にも仕事すればいいのに、なんか仕事もらってきてやろうか?」

カエル
「いいよ。食ってくには困らんし、気楽なのが一番だよ。」

運び屋のガイコツ
「気楽が一番なのは同感なんだけどさ、この生活しかできない理由があるなら聞かせてごらんよ。協力できるかも。」

カエル
「勘繰りすぎだよ、そんなんじゃねえ。」

運び屋のガイコツ
「ならいいけどさ、別に。」

運び屋のガイコツ
「あのさ、」

カエル
「うん。」

運び屋のガイコツ
「全然話変わるんだけどさ、」

カエル
「うん。」

運び屋のガイコツ
「墓の掃除してたらこんなもん拾ってさ。」

カエル
「指輪?罰当たりなことすんなよ。返してきな。」

運び屋のガイコツ
「いや、供えてあったりしたヤツじゃないよ。落ちてたんだよ。」

カエル
「住職さんには言ったの?」

運び屋のガイコツ
「言ってない。」

カエル
「なんで言わないのに持ってきちゃうんだよ、すぐ返してきな。」

運び屋のガイコツ
「掃除してるの夜中だもの。そんなことで起こせないよ。」

運び屋のガイコツ
「今日中には必ず持っていくよ。」

カエル
「そうしな。」

カエル
「でもなんか古いけど高そうな指輪だね。」

運び屋のガイコツ
「そう?よくわかんねえ。」

運び屋のガイコツ
「詳しいの?」

カエル
「いや、全然。」

運び屋のガイコツ
「なんだよ。」

カエル
「でもコレ、ここの部分、元々宝石が埋め込まれてたんじゃない?」

運び屋のガイコツ
「ホントだ、8か所くぼみがある。」

カエル
「でしょ?ほかにも一緒に落ちてなかった?」

運び屋のガイコツ
「わかんないよ、あんな暗がりの中で。その指輪だって自分のバケツ持ち上げたら下からでてきたんだもの。」

カエル
「だよな。」

運び屋のガイコツ
「集めたらなんかあんのかな?」

カエル
「神龍出たりしてな。」

運び屋のガイコツ
どんな願いも一つだけ叶えてくれるのか?」

カエル
「それかかつて世界を滅ぼした闇の王がさ、」

運び屋のガイコツ
「封印されてて?宝石はめると復活するとか?」

運び屋のガイコツ
「あとなんかさ、別の世界線に干渉出来たりとかさ。」

運び屋のガイコツ
「なんかワクワクしてきた。集めたくなってきちゃったね。」

カエル
「全然集めたくないよ。ガキじゃねえんだから。」

運び屋のガイコツ
「えー、いいじゃん、ロマンチックじゃん。」

カエル
「全然ロマンチックじゃないよ。」

運び屋のガイコツ
「真実を知りたいとは思わないのか?」

カエル
「別に、思わねえよ。」

運び屋のガイコツ
「冒険の予感がしないかね?」

カエル
「しねえよ。」

運び屋のガイコツ
「今すぐ家から飛び出してさ、あの人に会いに行かなきゃとかないかね?」

カエル
「ねえよ。」

運び屋のガイコツ
「なんだよ、こうゆう時のために占いやってんじゃないのかよ。」

カエル
「ちがうよ、自分が何者であるべきか知りたいだけだよ。あとは、他人と足の引っ張り合いしない為だよ。」

運び屋のガイコツ
「つまんねえな。だから自分の事うだつが上がらないとか言っちゃうんだよ。」

運び屋のガイコツ
「ロマンがないんだよ。ロマンというか情熱がさ。」

カエル
「いいんだよ。みんなでロマン追っかけてもしょうがねえし、みんなが社長や王様や金銀財宝目指してもしょうがねえだろ。」

運び屋のガイコツ
「確かにそうだけど卑屈すぎだよ。やりたい事やってない気がするよ。」

カエル
「わかったよ。半分は冗談だよ、本気で言ったわけじゃないよ。」

カエル
「やりたい事もやってるし指輪もちょっとだけドキドキしたよ。」

運び屋のガイコツ
「そうでしょうよ。じゃあ早く失われた宝石を集める旅に出ようぜ、こんな退屈な日常なんか捨ててさ。」

カエル
「なんでさっきからそんな金曜ロードショーでラピュタ観た後みたいなノリなんだよ。キミは少なくともオレよりは社会的なはずだったろ。」

カエル
「明日仕事あるんだろ?」

運び屋のガイコツ
「明日仕事ある。」

カエル
「じゃあ旅無理だね。」

運び屋のガイコツ
「旅無理だった。」

カエル
「じゃあ早く指輪返して来なきゃな。」

運び屋のガイコツ
「わかった。返してくるよ。」

運び屋のガイコツ
「また来るわ。」

カエル
「またね。」



天地否
てんちひ


否は「ふさぐ」。天地交わらず。
地天泰とは真逆で、泰平の世が終わりを向かえ、悪人がはびこる混沌の世の幕開けである。(北斗の拳)でも地天泰の時にも言ったけど傾いたものも、またいつか元に戻る。

十二消長卦では旧暦で七月、新暦で八月。

段々と陰の力が強くなってきました。

天はさらに高く、地はさらに低く、強者はさらに強く、弱者はさらに弱く。
金持ちはさらに金持ちに、貧乏人はさらに貧乏に。

流れが滞り、どこにもたどり着かず、結果総崩れ。

格差は必然。みんなで同じ方向向いててもしょうがないから。でも大事なのはバランス。何が欠けても、誰が欠けてもダメ。

ちなみに「三陰三陽」の卦。異性に縁があるって。


卦辞

否。之れ人に匪ず。
君子の貞に利ろしからず。
大往き小来たる。

ひ。これひとにあらず。
くんしのていによろしからず。
だいゆきしょうきたる。

人としての道理が通じない時。
君子の正しさをもってしても無理。
大きなものが去り、小さなものがやって来る。

色々な物事が上手く行かない。でも良く考えたら世の中の大体の事は
上手く行かない事の方が多い。あわてんな、想定内だ。想定内。


爻辞

地天泰とは逆に、乱れていたものが段々整って来る。ふさがって通じない時にもやれることはやっておいた方がいい。


初爻

茅を抜くに茹たり。
其の彙を以てす。
貞吉にして亨る。

ちがやをぬくにじょたり。
そのたぐいをもってす。
ていきつにしてとおる。

ちがやを一本抜くと、他のちがやもゾロゾロ抜けて来る。
正しい道を守っていれば、吉にして亨る。

つまらん人間と仲良くすると、その仲間もゾロゾロついてくる。
まだ完全に悪人というわけではないので、心を入れ替えれば吉。

つまらん人間で悪かったな。


二爻

包承す。小人は吉。
大人は否にして亨る。

ほうしょうす。しょうじんはきち。
たいじんはひにしてとおる。

包み隠し、人に従う。
小人はありのままでも吉。
大人はガマンして小人に習えば亨る。

常日頃から色んな事を我慢して、包み隠して、抑圧されてる人もいるので、偉い人でも我慢しなきゃいけない時は我慢して。

自分が非力なら、強い者に包み込まれて救われる。
自分に実力があるなら、包まれず自分を貫けば吉。


三爻

羞を包む。

はじをつつむ。

人に言えない事を包み隠している。

実力が無いのに力のある者に媚びへつらって自分を守ってもらう事が恥。
そもそもこういうヤツが上で幅を利かせてる状況が「否」の発端。

凶。隠し事が明るみに出るかも。騙されるかもしれないし、利用されるかもしれない。


四爻

命有り咎无し。疇祉いに離く。

めいありとがなし。たぐいさいわいにつく。

ふさがっていた事が開ける天命有り。
それに従えば咎めは受けない。
仲間と共に幸福を得る。

否も半ば過ぎ。運の転換期。まだ油断は出来ない。

人との交際は吉。


五爻

否を休す。大人は吉。
其れ亡びん其れ亡びんとす。
苞桑に繋ぐ。

ひをきゅうす。たいじんはきち。
それほろびんそれほろびんとす。
ほうそうにつなぐ。

ふさがっていた時期が一旦収まる。
完全に開けたわけではなくて、あくまで停滞。
大人はそれを理解しているので例えば細い桑の枝にぶら下がっているときの気持ちで油断せず、恐れ慎むので吉。

まだまだ油断は出来ない。もうちょっと。

上手く行ってなかった事が良い方向に向かう。


上爻

否を傾く。
先に否がり後には喜ぶ。

ひをかたむく。
さきにふさがりあとにはよろこぶ。

ふさがっていた時期の終わり。
まだふさがってはいるが、もうすぐ開けてそれを喜ぶ。

否の終わり。まだ良いとまでは言えないけど、次第に良くなっていく。


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