04 山水蒙

04 さんすいもう


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

パチ屋常連のガイコツ
「バッタ買ってきたよ。」

カエル
「おお、また勝ったの?」

パチ屋常連のガイコツ
「うん、勝った。」

茶番をトばす。

カエル
「どうなってんだよ。ありがとう。」

パチ屋常連のガイコツ
「しばらくコレで食ってこうかな。」

カエル
「ほどほどにしときなよ。」

パチ屋常連のガイコツ
「うん、でも楽しいんだよな。」

カエル
「勝ってる時はそりゃね。気持ちはわかるけどさ。」

パチ屋常連のガイコツ
「居心地も良いしさ。」

カエル
「わかる。」

パチ屋常連のガイコツ
「夏は涼しいしさ。」

カエル
「冬はあったかい。」

パチ屋常連のガイコツ
「パチンコ屋さんに住みたいもん。」

カエル
「パチ屋で働けば?」

パチ屋常連のガイコツ
「ヤだよ、そしたらその店で打てないじゃん。」

カエル
「でもいずれは負けるよ。」

パチ屋常連のガイコツ
「負けないよ。」

パチ屋常連のガイコツ
「占ってみなよ、良い卦が出るからさ。」

カエル
「そういう占い方はしねえ。」

パチ屋常連のガイコツ
「オレとキミでどっちがいいの出るか勝負しよう。」

カエル
「世間一般ではそれをギャンブルっつうんだよ。」

パチ屋常連のガイコツ
「似たようなモンじゃん。」

カエル
「占い由来と言われてるギャンブルはいっぱいあるけどさ、麻雀とか、チンチロリンとか。」

カエル
「でもデータと自分の知識を信じて偶然や確率に身を投げ出すギャンブルと、偶然出た目からデータと知識をすくい上げて、自分の立ち位置を確立する占いは似てるけど本質が真逆なんだよ。」

パチ屋常連のガイコツ
「なに上手い事言おうとしてスベってんの?」

カエル
「うるせえな。」

パチ屋常連のガイコツ
「じゃあさ、儲かったお金でなにか買おうと思うんだけどどんなもん買ったらいいか占ってよ。」

カエル
「好きなもん買えよ。バッタなんて喜ばれるんじゃないか?」

パチ屋常連のガイコツ
「もっと有意義なのがいい。」

カエル
「はい、山水蒙。三爻。」

カエル
「蒙は蠱に往く。」

パチ屋常連のガイコツ
「うん。」

カエル
「蒙。亨る。
我、童蒙を求めるに匪ず。
童蒙我を求む。
初噬は告ぐ。再三すれば瀆る。
瀆るれば則ち告げず。貞に利ろし。」

パチ屋常連のガイコツ
「どういう意味?」

カエル
「欲しいモンが思いつかないうちは無理に買わなくてもいいんじゃないかな?」

カエル
「スロットしたいんでしょ?」

パチ屋常連のガイコツ
「うん。」

カエル
「とめないけどさ。この卦は先生がバカな生徒を一人前に育てるって話なの。」

パチ屋常連のガイコツ
「だれがバカなんだよ。」

カエル
「例えばなんか参考書とか買って資格の勉強とかしてみたら?」

パチ屋常連のガイコツ
「勉強は嫌いなんだよ。」

カエル
「でも近いうちにそんな事も言ってらんなくなるかもね。」

パチ屋常連のガイコツ
「なんで?」

カエル
「蒙の三爻は蠱だから。」

パチ屋常連のガイコツ
「ムシ?」

カエル
「ムシがわいちゃうよ、頭に。」

パチ屋常連のガイコツ
「うん、わかってるよ。」

カエル
「パチンコだけの話じゃなくてさ、
やんなきゃダメな事先延ばしにするとさ、」

パチ屋常連のガイコツ
「わかってるよ、不衛生だ。」

カエル
「ホントに。」

パチ屋常連のガイコツ
「またバッタ買って来るよ。」

カエル
「わかってねえなコイツ。」

パチ屋常連のガイコツ
「参考書は買うよ。」

カエル「うそつけ。」

パチ屋常連のガイコツ
「ホントだよ。ありがとう。また来るわ。」

カエル
「またね。」

カエル
「一つ言い忘れた。
女には貢ぐなよ、絶対に。」

パチ屋常連のガイコツ
「そんな女いねえよ。」

カエル
「またね。」



山水蒙
さんすいもう


幼いとか、若いとか、凄くイヤな事があって自暴自棄になっちゃったりとか、要は迷える子羊。

視界が不透明で頭も正常に回らない。
どっちに進めばいいのかも分からないそんな状態。

そんな時には正しい道を示してくれる指導者が必要。
これは迷える子羊を導く正しい指導者の道。


卦辞

蒙。亨る。
我、童蒙を求めるに匪ず。
童蒙我を求む。
初噬は告ぐ。再三すれば瀆る。
瀆るれば則ち告げず。貞に利ろし。

もう。とおる。
われ、どうもうをもとめるにあらず。
どうもう われをもとむ。
しょぜいはつぐ。さいざんすればみだる。
みだるればすなわちつげず。ていによろし。

自分から教えるんじゃなくて、
相手から教えを乞いに来るのが理想。
理想というか正しい師弟の関係。
占いの答えは最初の一回しか告げない。
何回も同じことを占うのは占ってないのと一緒。もし生きてたら悔い改めろ。


爻辞

弟子をとった師匠の話。
ちょっと問題児な弟子と、その弟子に振り回される師匠の話だと思うとちょっとほのぼの。


初爻

蒙を發く。
用って人を刑するに利ろし。
用って桎梏を説く。
以って往けば吝。

もうをひらく。
もってひとをけいするによろし。
もってしっこくをとく。
もってゆけばりん。

弟子を教育する。
ナメられないためには最初が肝心。
悪い子にはキチンと縛り付けてでもお仕置きしよう。
でもやり過ぎは良くない。

ですよね。なんの異論もございませぬ。


二爻

蒙を包ぬ吉。婦を納る吉。
子家を克す。

もうをかぬ きち。ふをいる きち。
こ いえをよくす。

包容力。
夫婦のように、親子のように。
弟子に好かれる師匠に。

初爻とセットでアメとムチ的な考えなのかな。
こんなんに釣られる弟子いる?


三爻

女を取るに用うる勿れ。
金夫を見て躬を有たず。
利ろしき攸无し。

じょをとるにもちうるなかれ。
きんぷをみてみをたもたず。
よろしきところなし。

金持ちについてく女なんかやめとけ、良いことない。

手っ取り早くギャンブルで金を増やそうとするんじゃない。


四爻

蒙に困しむ。吝。

もうにくるしむ。りん。

何も知らない、何も見えない。
困る弟子。

知らない事が多いと色々損するから学ぶってホント大事。
例え雑学でも、豆知識でも。


五爻

童蒙。吉。

どうもう。きち。

自分のダメさを認めて真面目に勉強するようになった弟子。吉。

今度は自分が学んだ事を人に教えてあげよう。
インプットとアウトプットだ。


上爻

蒙を撃つ。
寇を為すに利ろしからず。
寇を禦ぐに利ろし。

もうをうつ。
あだをなすによろしからず。
あだをふせぐによろし。

弟子を敵に回すほど痛めつけるな。
できるだけ守ってあげよう。

そして若い世代の時代になったら今度は守ってもらって。


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