03 水雷屯

03 すいらいちゅん


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

無職のガイコツ
「おつかれ。」

カエル
「おつかれ。」

無職のガイコツ
「はい、お土産。」

茶番をトばす。

カエル
「バッタじゃん、ありがとう。」

無職のガイコツ
「いいって、今ちょっと金持ちだから。」

無職のガイコツ
「ありがとうね。」

カエル
「なにが?どしたの?」

無職のガイコツ
「昨日さ、占いどおりに西南の方角に向かって歩いたの。」

カエル
「うん。」

無職のガイコツ
「そしたらさ、偶然目の前にパチンコ屋が現れてさ、」

カエル
「光の中から?不思議な事もあるもんだな。」

無職のガイコツ
「うん、で、中入ったらさ、」

カエル
「うん。」

無職のガイコツ
「台が呼んでるの。打ちなさいつって。」

カエル
「何打ったの?」

無職のガイコツ
「ミラクルビンゴ。888G乗せたね。」

カエル
「すげえな。」

無職のガイコツ
「でしょ、最終的には7500枚出た。」

カエル
「いいなー。」

無職のガイコツ
「しばらく通おうかな、あの店。」

カエル
「仕事探しなよ。」

無職のガイコツ
「負けたらね。」

カエル
「なんかオレの占いのせいでドンドン堕落してってる気がするよ。」

無職のガイコツ
「堕落するしないなんか相対的なもんだよ。やりたくねえ仕事辞めて、やりたい事やってんだからいいじゃん。」

カエル
「なに訳の分からん事言ってんだよ。」

無職のガイコツ
「また占ってよ。」

カエル
「何を?」

無職のガイコツ
「明日はどの台が出るかさ。」

カエル
「ヤダよそんな禍々しいの。」

無職のガイコツ
「またバッタ買って来るよ。」

カエル
「じゃあ、オレがまたバッタにありつけるか占うよ。」

無職のガイコツ
「応援してくれんだ?」

カエル
「まさか。」

カエル
「出たー、水雷屯。変爻はなし。

カエル
「屯。元いに亨る。貞に利ろし。
往く攸有るに用うる勿れ。
候を建つるに利ろし。」

無職のガイコツ
「どういう意味?」

カエル
「あんまりよくない。」

無職のガイコツ
「もー。」

カエル
「全六十四卦の中に特に良くない卦が四つあってさ。」

無職のガイコツ
「うん。」

カエル
「そのうちの一つだ。伸び悩み、行き悩む。」

無職のガイコツ
「行くなって事かよ。」

カエル
「行くなって事だよ。」

カエル
「でも良くないってのも考えようでさ。」

無職のガイコツ
「うん。」

カエル
「この卦は良い卦ではないんだけどさ、生みの苦しみとか、恵みの雨の前兆とかって意味もあるからさ、」

無職のガイコツ
「うん。」

カエル
「最初はちょっとへこむだけかも知らんし、パチ屋行く前になんかトラブルあるかも知らんし、それで死ぬかも知らんし。」

無職のガイコツ
「なるほど。まあ、もう死んでんだけどさ。」

カエル
「パチ屋行くのは止めないけど、ダメそうなら痛い目見る前に逃げなよ。」

無職のガイコツ
「バッタの事占ったんだろ?」

カエル
「そうだよ。」

無職のガイコツ
「じゃあ、良くないのはオレじゃないな。」

カエル
「バッタ買えなくなる位負けるかもよ。」

無職のガイコツ
「負けねえよ、明日はバッタの雨を降らせてやるよ。」

カエル
「降るかよ。」

無職のガイコツ
「忠告ありがと、またくるわ。」

カエル
「またね。」



水雷屯
すいらいちゅん


天気は曇り。雷注意報。恵みの雨の前触れと、曇天模様に浮き沈む情緒。
空の呻き、伸び悩み、雲の喘ぎ、行き悩む。

雷雲がゴロゴロ鳴っている様を、その後に降るはずの恵みの雨を産みの苦しみや成長の苦労に例えてる。

四難卦の一番手。どんな偉人や英雄も、誰もが一度は止まるところ。
求められるのは覚悟と、踏み出す勇気と、失敗を恐れない心と、何事も前向きに考える都合のいい脳みそ。


卦辞

屯。元いに亨る。貞に利ろし。
往く攸有るに用うる勿れ。
候を建つるに利ろし。

ちゅん。おおいにとおる。ていによろし。
ゆくところあるにもちうるなかれ。
こうをたつるによろし。

いずれは何事も順調に進む。
今は時期ではないのでその時が来るまで行動は起こさない事。
自らは動かず、諸侯に国を任せた方が良い。

準備中。今はまだ動く時じゃない。納得するまで充分悩もう。
どうしても一人で解決出来なかったら、誰か分かる人に相談しよう。


爻辞

なんにせよ、トラブルの渦中にいるので、じっくり考える事の大切さと、むやみやたらに動いちゃダメだよって話。

そんなことわかってんだよ。出来りゃ最初からやってるよ。


初爻

磐桓たり。貞に居るに利ろし。
候を建つるに利ろし。

ばんかんたり。ていにおるによろし。
こうをたつるによろし。

大きな石や柱のように動かない方が良い。
自分では動かず人に頼もう。

今動くのは良くない。
まず落ち着いて、どっしりと構えて作戦を練ろう。
頼れる人には頼ってみても。


二爻

屯如、邅如、馬に乗りて班如。
寇するに匪ず。婚媾せんとす。
女子貞にして字せず。

十年にして乃ち字す。

ちゅんじょ、てんじょ、うまにのりてはんじょ。
あだするにあらず。こんこうせんとす。
じょし ていにしてじせず。

じゅうねんにしてすなわちじす。

馬に乗ってウロウロ、アタフタ。
求婚者を敵と間違える。
目の前のどうでもいい男と婚約するな。
十年後は言い過ぎだけど、待ってたら良い人出てくるから。

なんかラップみたい。
急いては事を仕損じる。
大事な事を簡単に考えないで。
じっくり悩んで、考えて。


三爻

鹿に即きて虞无し。
惟林中に入る。
君子幾を見て舎つるに如かず。

往けば吝。

ろくにつきて ぐなし。
ただりんちゅうにはいる。
くんし きをみてすつるにしかず。
ゆけばりん。

鹿を追いかけるのに夢中になって、案内人も付けずに林の中に。
行っても恥かくだけだから帰ってきて。

とにかく落ち着け。
しっかりと準備して。


四爻

馬に乗りて班如。婚媾を求む。
往けば吉。利ろしからざるなし。

うまにのりてはんじょ。こんこうをもとむ。
ゆけば きち。よろしからざるなし。

馬に乗ってウロウロしてたら求婚される。
行けば吉。良くないわけがない。

悩んでた所に思わぬ助け舟。乗って良し。


五爻

其の膏を屯す。
小貞なれば吉。
大貞なれば凶。

そのこうを ちゅんす。
しょうていなれば きち。
だいていなれば きょう。

流れが行き渡らない。
普段通りにしてれば吉。
焦って大きい事すると凶。

何かが足りない、何かが噛み合わない。
自分を取り戻して、大逆転とか狙わないで。


上爻

馬に乗りて班如。
泣血漣如たり。

うまにのりてはんじょ。
きゅうけつれんじょたり。

泣きながら血を流して、馬に乗ってウロウロしてる。

屯の極。何のフォローも出来ない。
でも何か産み出す時には失敗は付き物だし、失敗は成功の元だし。


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