02 坤為地

02 こんいち


かえるのうた

カエル
「いらっしゃい。」

無職のガイコツ
「またきたよ。」

無職のガイコツ
「言われたとおりに辞めてきたよ。」

カエル
「人のせいにすんなよ。」

茶番をトばす

無職のガイコツ
「とめなかったじゃん。」

カエル
「まさかホントに辞めるとはね。」

無職のガイコツ
「もう後には退けない。」

カエル
「で、次の仕事は決まったの?」

無職のガイコツ
「まだ決まってない。」

無職のガイコツ
「急に肩の力が抜けちゃってさ。」

カエル
「うん。」

無職のガイコツ
「とりあえず街をブラブラ散歩するのが最近の趣味だ。」

カエル
「やべえヤツじゃん。」

無職のガイコツ
「うん、やべえヤツなんだわ。」

カエル
「責任感じちゃう。」

無職のガイコツ
「うそつけ。」

無職のガイコツ
「また占ってよ。」

カエル
「何を?」

無職のガイコツ
「明日はどこら辺ブラブラしようかなって。」

カエル
「仕事探しも兼ねてって事?」

無職のガイコツ
「もちろん。」

カエル
「出たよ、坤為地の初爻。」

無職のガイコツ
「うん。で?」

カエル
「坤。元いに亨る。牝馬の貞に利ろし。
君子往く攸あり。
先んずれば迷い、後れれば主を得る。
西南朋を得るに利ろし、
東北朋を喪うも、貞に安んずれば吉。」

無職のガイコツ
「長いし全然分からん。」

カエル
「うん。」

無職のガイコツ
「でもなんか西南とか東北とか身近な漢字が書いてあって安心するな。」

カエル
「西南は得する。」
東北は損するけど最終的には得する。」

カエル
「方角を示してるみたいだけど、西南は緩くて賑やかな道、東北は険しくて心細い道を進めって意味も含んでる。」

無職のガイコツ
「どっちにしろ西南に行けばいいんだな?」

カエル
「行ってもいいけど焦らずのんびりと人の後ついていくくらいでいいよ。」

無職のガイコツ
「一人で行くのよ?」

カエル
「例えばの話だよ、そうゆう卦なの。牝馬のように大人しく従順なの。」

無職のガイコツ
「ふーん。」

カエル
「あと初爻が変爻だから。」

無職のガイコツ
「うん。」

カエル
「ちょっと待ってねモタモタ」

無職のガイコツ
「付箋をつけろよ。」

カエル
「あった地雷復。坤は復に往く。」

無職のガイコツ
「どういう意味か?」

カエル
「なんかさ、復帰とか回復とか帰ってくるって意味だから。」

無職のガイコツ
「うん。」

カエル
「仕事が見つかるか、なんか元気を取り戻すような事があるか。」

無職のガイコツ
「は?西南に行けば?」

カエル
「うん、わからんけど。まあ、気楽にやれって事。」

カエル
「でもしっかり準備してからな。」

無職のガイコツ
「しっかり準備してゆっくり?」

カエル
「静脈に注射針を差し込むような気持でゆっくり。」

無職のガイコツ
「どう?明日一緒に行く?西南?」

カエル
「いかねえ。」

無職のガイコツ
「そか、わかったよ。またくるよ。」

カエル
「またね。」



坤為地
こんいち


「乾為天」と真逆の六爻全てが陰爻の卦。裏方の卦。

天からの恵みを受け、あらゆる生命を育む大地。
豊かな大地も天からの恵みを受けなければ何も育まない。
なので本質は受け身。従順。悪く言えばされるがまま。

大人しく人懐っこい牝馬のように、従順な態度で、慎ましく、穏やかに。

八純卦の一つ。
十二消息卦の一つで、新暦で十一月を表す。


卦辞

坤。元いに亨る。
牝馬の貞に利ろし。
君子往く攸あり。

先んずれば迷い、
後れれば主を得る。
西南朋を得るに利ろし、

東北朋を喪うも、
貞に安んずれば吉。

こん。おおいにとおる。
ひんばのていによろし。
くんし ゆくところあり。
さきんずれば まよい、

おくれれば ぬしをえる。
せいなん ともをえるによろし、
とうほく ともをうしなうも、

ていにやすんずればきち。

従順な牝馬のように人に付き従う。
行き先があっても、急いで先に行こうとしないで、人の後ろについて行く位でちょうどいい。
西南でいい事があるかもしれないけど、東北ではよくない事があるかも。
従順に人当たり良くしておけば吉。

乾為天の真逆の卦だけあって、卦辞が乾為天と比べて長文で具体的。
落ち着き具合が良く分かる。

西南とか東北はこの後の卦でも出てくるけれど、暖かくて、明るくて、緩やかで、優しいほうが西南。寒くて、暗くて、険しくて、厳しいほうが東北。

運気が強い時は試練も苦難も望むところだが、この卦みたいに元気が無い時は無理せず楽だと思う選択も大事。


爻辞

人に付き従う時の立ち振る舞いと、出しゃばるとどうなるかが書いてある。
あんまり悪い事は書かれてないし、乾為天より共感度は高い。


初爻

霜を履みて堅氷に至る。

しもをふみて けんぴょうにいたる

サクサクの霜も、踏み固めれば固い氷になる。


物事には前触れがある。
早めに対策を立てないと取り返しのつかないことに。
トラブルの芽は早めに摘め。
下っ端にしか気付かない事もある。


二爻

直方大。習わずして利ろしからざる无し。

ちょくほうだい。ならわずしてよろしからざるなし。

直方大。
例えば大きくて四角い箱に色々な使い道がある様に、素直で、正しくて、器の大きい人は人から習わなくても当たり前のように道が開ける。

コレ大好き。


三爻

章を含む貞にすべし。
或いは王事に従うも、
成すこと无くして終わり有り。

しょうをふくむていにすべし。
あるいはおうじにしたがうも、
なすことなくしておわりあり。

才能をひけらかさない。
大仕事に従事しても、大活躍とまでは行かないけど、それなりの結果は出せる。

ひけらかさない。
以上。


四爻

囊を括る。咎无く、誉れ无し。

のうをくくる。とがなく、ほまれなし。

袋の口を縛っとくように、ここでもまだ才能をひけらかさず、口を慎む。
別に怒られないし、褒められない。

咎められないし褒められないのが本当にいいか?
ちょっと卑屈過ぎないか?さみしくない?


五爻

黄裳。元吉。

こうしょう。げんきつ。

遂に大出世を果たす。
でも従う側の気持ちもわかるから威張らないし驕らない。

これはもう大吉。


上爻

龍野に戦う。其の血玄黄。

りゅうやにたたかう。そのちげんこう。

龍が野で血を流して戦っている。

ここでまさかの龍の戦い。
穏やかに、従順にが牝馬のただしさなのに、龍気取り、王様気取り。
だから痛い目見る。


用爻

永貞に利ろし。

えいていによろし。

坤のただしさは、それを継続させる事。

この穏やかな日々が永遠に続きますように。

乾為天にも出てきた用爻の爻辞は、調べてみたら六十四卦全体に通ずるメインテーマみたいなものらしい。

※用爻=乾為天と坤為地にだけあるプレミア。
本噬法や中噬法など爻を一つずつ積み上げていく占い方で、初爻から上爻全部老陰(老陽)の場合に用いるらしい。


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